社会で子どもを育てる活動

社会で子どもを育てる活動 【2008年5月号】

弁護士  杉  浦  宇  子


 安心できる家庭や居場所がなく、行き場がない。少年事件や、虐待事件でそんな子どもに出会うことがあります。そんなときは、住み込みの職場や、自立援助ホーム、里親、行政や民間の施設など、子どもたちを支援し受け入れてくれる居場所を探します。しかし、子どもたちのために社会で用意されている居場所が少ないことに愕然とします。目の前にいる今晩泊まる場所のない子どもを放っておけず、自分の事務所の書庫などに子どもを泊めたことのある人もいます。

 「今行き場のない子どもが落ち着く先や仕事を見つけるまでの間、せめて一次的に暮らす場所が欲しい。」子どもの事件に携わる弁護士の中にそういう思いが募り、平成16年「思っているだけでは変わらない。自分達で作ろう。」と、弁護士有志が集まり、福祉関係者と共に、「こどもの家」設立準備会を立ち上げました。その後幾度も会議を重ね、資金・不動産・スタッフの確保に奔走して平成18年12月に特定非営利活動法人子どもセンター「パオ」が誕生し、平成19年にようやく子どものシェルターを開設することができました。

 「パオ」とは、モンゴルの組立式の家のことです。モンゴルを吹き荒れる嵐から人々を守るように、傷ついた子どもたちがシェルターや子どもセンターの支援によって守られ癒されて、次のステップに進んでいけるようにとの思いが込められています。

 現在運営するシェルターは、既に数名の利用者がありました。わずかな期間の関わりですが、今後の子どもたちの支えになってほしいと思いながら活動しています。保護者や大人の不適切な関わりによって、幼い心を深く傷つけられてきた子どもたちとの関わりには、解決マニュアルのない問題が次々出てきます。悪戦苦闘しながらひとつひとつ取り組んでいる毎日です。そして、子どもが安心したり癒されたりしていると感じるときには、本当にうれしく思います。

 シェルター運営には、子どもとの関わり以外にも、資金調達や、スタッフ育成、など問題が沢山あります。それでも、「自立援助ホームを作ろう。」「子どもが働く店を作ろう。」等々、夢は次々と広がっていきます。シェルターに入所して落ち着き先を探しても、なかなか見つからず、先の見えない不安で子どもが更に傷つく現実があるからです。ないなら作っちゃおう!いつ実現するか分かりませんが、支援を必要とする子どもがいて、思いを同じくする仲間がいて、応援してくれる皆さんがいるなら、いつかきっと実現できると信じています。

 子どもセンター「パオ」は、子どもの幸せを願う人達が協力して問題解決できるようネットワーク作りや、社会への情報発信、子どもが必要とする支援の提供を活動目標にしています。その活動の一環として、毎年イベントを開催しており、今までに、テノール歌手の新垣勉さん、タレントの矢野きよ実さん、絵本作家の五味太郎さんらに来てもらい、今でも応援してもらっています。

 今年は、7月26日(土)午後、知多市勤労文化会館つつじホールで、福井で和太鼓を教えながら子どもの生活を支援し、全国各地で公演をしている「はぐるま太鼓」を招いて、魂を込めて自分を表現する子ども達の勇壮な太鼓の演奏を企画しています。地元の太鼓グループとの競演も考えています。興味のある方は、是非いらして下さい。詳しくは近日ホームページ(http://www.pao.or.jp/)でお知らせしますので、ご覧下さい。