共有に関する諸問題【2021年1月】弁護士池田篤紀

 

1 はじめに

「共有」という言葉をご存知でしょうか。「共有」とは、一つの対象物(たとえば、動産、不動産)を複数人で所有することを言います。そして、共有者が対象物に対して有する権利を「共有持分権」と言います。

 相続、夫婦での住居を購入、その他節税対策の結果、共有状態が発生することが多いです。共有とすることにメリットもありますが、一人の共有者が単独で占有・使用することが多いため、紛争がとても起こりやすいです。

 民法では、共有に関する諸ルールを定めていますが、今回は、「共有物を一人で占有・使用する場面で起こり得る問題」を、不動産を例に、Q&Aの形式で紹介します。

 

2 Q&A

Q 共有者Aが、共有不動産を「単独」で占有・使用する共有者Bに対して、共有不動産から出ていけと明け渡しを求めることはできるのか?

A 共有者は、自身の共有持分権により共有不動産「全体」を占有・使用することができます。一方、Aも共有持分権を有するため、Bによる共有不動産全体の「単独」での使用・占有は、Aの共有持分権を侵害します。そのため、AはBに対し明け渡しを求めることができるとも考えられそうです。しかし、過去の判例によると、共有開始時に決めた使用方法に反する場合や占有状態を強奪された場合等の特殊な事情がない限り、原則として、Aは、単独で使用するBに対し、明け渡しを求めることはできないとされています。

Q 上記の例で、Aの共有持分割合が過半数であった場合(Bよりも多い場合)でも同じ結論になるのか?

A 共有持分権自体により、共有不動産全体を占有・使用することができるので、Aが多数持分権を有していることをもって、明け渡しが認められることはありません。

Q それでは賃料相当額等の金銭を請求できるのか?

A 対象物を使用していない共有者は、共有持分権を侵害されていることになるため、AからBへの金銭請求(共有持分割合に応じた賃料相当額など)は原則として認められます。しかし、相続の場面においては相続開始前より被相続人が共有者に単独で占有することを許容していた場合など特殊な事情がある場合には、金銭請求をすることはできません。

 

3 最後に 

 上記のような問題は、共有開始時に「対象物に対する使用・管理方法」を明確に決めないことが多いため、後日、大きな紛争に発展してしまいます。そのため、対象物に関する使用・管理方法を、紛争になる前(特に共有開始時)に書面で明確に残しておくことが有益かと思います。

 今回説明しましたのは、共有物の単独使用に関する問題のみですので、これ以外の紛争類型(たとえば、共有状態からの解消)についても後日ご紹介したいと思います。