意思表示の公示送達
意思表示の公示送達 【2009年11月号】
弁護士 今 井 千 尋法律相談をお受けしていると、「相手方との契約を解除したいが、相手方がどこにいるか分からない。どのようにして解除したら良いのか。」というご質問を受けることが時々あります。
たしかに、意思表示の効力は、通知が相手方に届いたときに生じますので(民法97条)、相手方が行方不明であるため通知書等を送付できない場合、そのままでは事実上解除ができないことになります。
このような場合に、意思表示が相手方に到達しなくても到達したものとみなして意思表示の効力を発生させる方法として法律が定めている制度が、意思表示の公示送達(民法98条)です。具体的には、裁判所の審理を経て許可決定が出れば、書面が裁判所の掲示場に掲示され、かつ、その掲示があったことを相手方に通知する書面が市区町村役場の掲示場に掲示されることになります。そして、市区町村役場の掲示場での掲示を始めた日から2週間を経過した時に、意思表示の効力が発生するのです。
この制度を利用することができるのは下記の場合です。
① 意思表示の相手方を知ることができないとき
② 意思表示の相手方の所在を知ることができないとき
したがって、冒頭のような、相手方が行方不明であるような場合だけでなく、相手方が死亡し、相手方の相続人が誰であるのか不明であるような場合にも、この制度を利用することができます(契約書に記載のある住所地に戸籍や住民登録がないような場合にはこのようなことがあり得ます)。
相手方が不明であること又は相手方の所在が不明であることを証明するため調査を行い、その結果を記載した報告書を作成しなければならないなど、労力を要する制度ですが、当事務所ではこの種のご相談にも応じておりますので、お気軽にご相談下さい。