悪質な架空請求について【2004年9月号】

 

弁護士 安 田   剛

 利用した覚えがないのに、有料アダルト番組の利用料やダイヤルQ2と称する情報料、債権などを請求する「架空請求」の文書が、封書やハガキ、電子メール、電報などで送りつけて来る悪質な業者が数多く存在するようです。このような架空請求の文書には、通常、請求する債権の金額も明記されておらず、個人の携帯電話番号などが記載され、「下記連絡先に連絡するように」と、こちらからの連絡を促すように書かれていることが多いようです。

 中には、「○○弁護士事務所」など弁護士の名前を騙ったものもあり、「入金がなければ勤務先を調査する」「給料を差押える」「強制執行する」など不安を煽るような脅し文句が書かれていることもありますが、このような「架空請求」への一番の対処法は「徹底的に無視する」ことに尽きます。文書が送付され不安に思い、身に覚えのない料金を支払ったり、記載されている電話番号に連絡したりすると、こちらの個人情報を悪質業者に伝える結果となる場合もあり、逆効果です。

 もっとも、最近はさらに業者側の手口が巧妙化しているようで、「架空請求」について、業者側が裁判所に訴訟を提起する場合もあるようです。裁判所から「訴状」などの文書が届いた場合、これを「無視」してしまうと、相手方の言い分を認めたことになってしまい、「金○○円を支払え」という「欠席判決」が裁判所から言い渡されてしまうことになってしまいます。「無視する」という対処法を逆手に取った手口で、注意が必要です。

 これからは「基本的には無視。但し裁判所から書類が届いたら要注意。困ったら弁護士に相談する。」ことが大切です。