大学入学金の返還訴訟について【2003年11月号】
大学の入学試験に合格した受験生が、入学金や授業料などを納付した後に、大学への入学を辞退した場合、入学金等を返還してもらえるのでしょうか。ニュース等でも元受験生が大学の入学金の返還を求めた訴訟のことが報じられているため、ご存知の方もいらっしゃるかも知れません。
最近、この件に関する裁判所の判決が何件か出ているのですが、裁判所の結論は、入学辞退者への入学金等の返還を認めたものと、そうでないものに分かれています。
結論の一つの分かれ目は、平成13年4月1日に施行された消費者契約法が適用されるかどうか(平成13年4月1日以降の入学者かどうか)と言う点です。
消費者契約法が適用されることになると、実際の損害額を超えるような違約金を定めた約束は無効となります。この場合には入学を辞退した受験生に入学金等を返還しないという特約は実際の損害額を超えるような違約金の約束なので無効となり、入学金等(少なくとも授業料)の返還請求が認められています。
大学への入学手続きは一見「契約」とは思えないですが、これも立派な「在学契約(入学契約)」であり、しかも大学=事業者と受験生=消費者との間の契約ということで、消費者契約法が適用されることになるのです。
消費者契約法は、事業者(=会社)と消費者(=個人)の間のあらゆる種類の契約に適用される非常に適用範囲の広い法律で、しかも、契約書の条項で消費者に不利なものが無効となることがあるという法律です。
大学の入学金も、今までなら当然返還不要と考えられていたものが消費者契約法の施行により変化しており、この件に限らず消費者契約法が適用されるかどうかには、十分な配慮が必要です。