トラブルをスピーディーに解決 ~仲裁センター~【2006年1月号】
《裁判は時間がかかる?》
社長 | 長年の取引先とちょっとトラブルがあってご相談なんですが…… |
弁護士 | どうしました? |
社長 | 納品のことでちょっと行き違いがあって。契約書の解釈で取引先とどうしても折り合えなくて。 でも、今回は結構大きい損が出たので、こちらも簡単に譲れないんです。 |
弁護士 | どれくらいの損が出たんですか? |
社長 | 約1000万円です。 |
弁護士 | それは大変ですね。裁判をするという方法もありますが。 |
社長 | 裁判は、時間がかかるんじゃないですか? |
弁護士 |
裁判も最近はだいぶ早くなりましたが、それでも、地方裁判所の事件の約20%は1年以内に事件が 終わっていないし、5年を超えるような事件も毎年全国で500件以上あると言われています。 |
社長 |
そんなに待てません。それに、相手は昔からの取引先なんです。ちょっとしたトラブルなんで、裁判 とかの大事にはしたくないんですよね。誰か公平な第三者が意見を言ってくれると、すぐ解決すると 思うんですが……。 |
弁護士 |
なるほど。それでは、弁護士会の「あっせん・仲裁センター」にトラブルの解決を申し立ててはどう ですか? |
《仲裁センターとは?》
社長 | 仲裁センター? 何ですか、それは? |
弁護士 |
仲裁センターは、弁護士会の中に設けられた、トラブルを処理する機関です。中立的な弁護士が「仲 裁人」となり両者の間に立って、トラブルの仲裁や和解の手助け(あっせん)をします。 東海地方では、現在のところ愛知県弁護士会(名古屋)・愛知県弁護士会西三河支部(岡崎)・岐阜県 弁護士会(岐阜)にありますが、非常に評判が良く、これからも増えていくと思います。 |
《早くて適正な解決》
社長 | 仲裁センター? 何ですか、それは? |
弁護士 |
一つには「早い」ということです。愛知県弁護士会あっせん・仲裁センターで解決に至ったケースは、 平均3か月弱という極めて短期間で終結しています。 |
《気になる費用は?》
社長 | だけど、そんなに良い手続なら、高い費用がかかるんじゃないですか? |
弁護士 |
申立の時には、申立手数料として1万円が必要です。また、最終的に解決したときには、成立手数料を 基本的には双方で折半して払います。御社のケースでは、1000万円の和解が成立した場合は、16 万円ずつを双方で負担するのが基本となります。 |
社長 |
このままだと1000万円泣き寝入りだけど、申立手数料や成立手数料を払ってでも、解決をお願いした 方が良さそうですね。この手続は、先生にお願いしないと申立ができないんですか? |
弁護士 |
もちろん弁護士なしでもできます。ただ、弁護士を代理人として選任すれば、別途費用はかかります が、あっせん手続もスムーズに進むと思いますし、解決案についても御社に有利なアドバイスができ ると思います。 仲裁人の弁護士は、あくまで中立な立場で解決にあたりますから、御社は、御社の利益を代弁する 弁護士を選任された方が良いと思いますよ。 |
《注意すべき点は?》
社長 | 逆に、注意しなければならないのは、どんな点ですか? |
弁護士 |
仲裁センターには、相手の出頭を強制する力がありません。 また、相手方が出てきた場合でも、仲裁人のあっせん案に相手方が承諾しない場合や、仲裁合意 (仲裁人に下駄を預けますという合意)が成立しない場合には、仲裁人の案を強制することはできま せん。 そのような場合、結局は裁判をするしかないことにはなりますが、一旦仲裁センターで話し合ったことが 一つの大きな要因となって、訴訟も早期に和解で解決したというケースもあるようです。 |
社長 | ほかに注意すべき点はありますか? |
弁護士 |
仲裁センターでのあっせん申立では、申立をしても時効の進行を止める効力がありません。ですから、 古い売掛金の請求のようなケースは注意が必要です。ただ、この点も、平成16年に国会で成立した 「裁判外紛争解決手続促進法(ADR基本法)」が施行されると(平成19年5月までに施行予定)、 弁護士会の仲裁センターへの申立にも時効中断の効力が認められる可能性があります。 |
《和解内容を相手が守らない場合は?》
社長 |
仲裁センターで分割払の和解が成立したとして、もし後になって相手が和解契約を履行しなかったら どうなりますか? |
弁護士 |
「和解契約を不履行にした」として裁判所に訴えることになります。 ただ、この場合も、一旦仲裁センターで合意が成立しているのですから、一から裁判をするよりはずっ と早く解決すると思います。 また、愛知県弁護士会の仲裁センターでは、名古屋簡易裁判所に申し入れをして、「即決和解」という 手続にのせて、合意内容に判決と同じ効力を持たせるという方法を用意しています。簡裁への即決 和解申立費用が別途かかりますが、これなら、もし相手が和解を履行しなかった場合には、強制執行 もできます。 弁護士会では仲裁センターが更に利用しやすくなるように、建築家・不動産鑑定士・カウンセラーや 国際商事仲裁の専門家にも仲裁人に入ってもらい、多数の事件を解決しています。 |
社長 | なるほど。弁護士会の仲裁センターは、実情に応じた様々な紛争解決ができるように色んなメニュー を用意しているのですね。是非、利用したいと思います。さっそく申立をお願いします。 |