離婚時の年金分割について

 離婚時の年金分割について【2006年7月号】

弁護士 安  田   剛


  離婚時の年金分割の制度が、来年の4月1日から導入されます。これは、夫が民間サラリーマンや公務員の場合、婚姻期間中に相当する年金の2分の1を上限として、合意によって妻に分割することができるというものです。

   一般的には女性に有利な制度であり、ここ1~2年離婚の件数が減少している原因は、この年金分割の制度が導入されるのを見越して、女性が離婚するのを手控えしているためとも言われています。
  この制度のポイントを整理すると次の通りです。

①「合意」によって分割される制度です。

  例えば、夫が年金の分割を拒否して合意が成立しない場合に、当然に分割されるというわけではありません。
 もっとも、両者間で合意が成立しない場合、家庭裁判所に調停を申立てることができ、調停が不調となったときは、審判により裁判所が2分の1を上限として分割の割合を決定することになります。

② 分割の対象となる期間は「婚姻期間中」に限られます。

 したがって、婚姻期間が短い場合には、分割される年金額もそれ程多額にはならないと思われます。

③ 離婚時に年金がもらえるわけではありません。

  婚姻期間中の夫の厚生年金の年金納付記録が分割され、将来妻が受け取る年金額の算定基礎になる(年金額が加算される)のが年金分割の制度で、あくまでも年金が実際にもらえるのは、将来、年をとってから、ということになります。

  なお、再来年の平成20年4月1日以降、夫がサラリーマンや公務員で、妻が専業主婦の場合、同日以降の期間に相当する年金は、離婚時に強制的に2分の1ずつに分割される制度も導入される予定です。これは、冒頭の来年4月1日から導入される制度と異なり、「合意」は要件となっておらず、離婚時に「強制的に」分割されるもので、より強力なものです。

  もっとも、分割の対象になる期間は平成20年4月1日以降に限られ、婚姻期間中全てというわけではありませんので、当面の間は、それ程大きな問題になることはないと思います。