離婚後の子どもの養育費について

離婚後の子どもの養育費について 【2016年2月号】

弁護士  安   田        剛



 今回は、離婚後の子どもの養育費をきちんと支払ってもらうにはどうすればよいか、を考えたいと思います。

 1.養育費とは?

 離婚をした夫婦に子どもがいる場合、通常は離婚後離れて暮らす夫婦の一方が子どもを養育し、もう一方は子どもと別れて暮らすことが多いと思います。
 そのような場合に、子どもを養育する側の親が、もう一方の別れて暮らす側の親に請求できるのが「養育費」です。

 2.養育費の相場は?

 養育費の金額は、当事者間で協議して定めるため、法律上はいくらと定めても構いません。 ただ、当事者間で金額に争いがある場合、参考となるのが家庭裁判所で用いられる養育費の「算定表」です。
 「算定表」では、子どもの人数や年齢、養育費を請求する側の収入と支払う側の収入に応じて、基準とされる金額が掲載されています。
 養育費の金額に争いがあり、家庭裁判所で調停となった場合、家庭裁判所の調停委員はこの「算定表」を用いて養育費の金額を算定し、調停を進めることが多いため、当事者間で協議して養育費を定める場合にも「算定表」が参考になると思われます。

 3.養育費をきちんと支払ってもらうにはどうすればよいか。

 離婚時に養育費の金額も夫婦間で話し合って決め、支払ってもらう旨の約束も取り付けたが、その後養育費を支払ってもらえなくなった、というのはよくある相談の一つです。

 予防策として、まず最低限、①養育費を支払ってもらう旨の合意を「書面」で取り交わしておく、ということが必要です。口約束でも合意は無効ではありませんが、後に相手方に合意の内容を否定された場合、証明するのが困難ですから、明確に書面にしておくことが第一歩です。
 ただ、書面にしておいても、その後相手方が養育費の支払を怠った場合、その書面には強制力がないため、例えば相手方の給料や預貯金を差し押さえたりすることはできません。

 そこで、離婚時に相手方の協力が得られる場合であれば、養育費の支払に関する合意内容を、②公証役場で公正証書として作成しておく、ことを勧めます。公正証書作成には公証人の手数料が費用としてかかりますが、公正証書(強制執行認諾文言付き)としておけば、将来相手方が養育費の支払を怠った場合、公正証書を債務名義として相手方の給料や預貯金に強制執行することができます。
 ただ、公証役場で公正証書を作成するには、相手方もそれを承諾して協力してくれることが必要で、作成する際には原則として当事者双方が公証役場に赴く必要があります。
 従って、相手方が協力してくれない場合には、この方法で進めることはできません。

 その場合には、③家庭裁判所に調停を申し立て、養育費の支払に関する内容を「調停調書」とするのが良いと思います。相手方が養育費の支払に応じてくれず話し合いに応じない場合も、調停を申し立てるのが良いと思います。
 「調停調書」も公正証書と同様、相手方が養育費を支払わない場合に、強制執行できる効力がありますので、相手方にきちんと養育費を支払ってもらうための強力な手段となると思われます。

 当事務所ではこのような養育費の御相談もお受けしていますので、ご不明な点はお問い合わせいただければと思います。