意外と重要な法律 「消費者契約法」

 意外と重要な法律 「消費者契約法」 【2006年11月号】

弁護士 榎 本   修


 
  ここ数年、マスコミで私立大学の入学金・授業料の返還請求の訴訟がよく報道されています。昔はなかったこのような訴訟が、なぜ沢山起こされるようになったのでしょうか。

  * 新しい法律「消費者契約法」
   このような訴訟が起こされるようになった大きな原因は、平成13年に施行された新しい法律「消費者契約法」にあります。
  * 幅広い適用範囲

  この「消費者契約法」は、大学のことだけではなく、様々な企業活動にかなり幅広く適用される法律です。業種も問いません。およそ「消費者」と「事業者」が締結する契約には全て適用されます。最近の判決では、例えば、①飲食店の予約契約、②中古車販売の売買契約、③歌手・俳優養成の専門学校への入学契約などで業者側に金銭支払を命じた判決が出されています。これまでは、あまり知られていなかった消費者契約法の効用が広く知られるようになってきたため、判例も沢山紹介されるようになってきましたし、マスコミなどで一般の人が情報を得る機会も増えてきています。

  これまで「うちは関係ない」と思っておられても、また、御社自身は直接には消費者との取引はなくても、御社が納入している商品が納入先から消費者に売り渡される場合には、消費者契約法のことを意識しておくことが大切です。

  *「契約」なんてしていない?
 「『契約』と言われても、うちはお客さんと契約書を作るような取引なんて何もしていないから関係ない」と言われるかもしれませんが、契約書があるかどうかは関係ありません。法律上は、コンビニでパンを1個買うのであっても契約です(売買契約)。これについてさえ消費者契約法は適用があります。
  * 効果も重大
 様々な契約の「取消」「無効」の主張が認められます。

● 誤認による取消権(4条1項・2項)
①重要事項の不実告知(1号):契約の勧誘の際、重要事項について不実(ウソ)の告知があった場合に、後から取消しが認められます。
②断定的判断の提供(2号):本当は不確定なことについて「絶対大丈夫」と説明した場合に、後から取消しが認められます。
③不利益事実の不実告知(3号):不利益な事実についてウソをついた場合です。

●困惑による取消権(4条3項)
 不退去・退去妨害の場合に契約取消を認めるものです。    

●不当な契約条項の無効

①責任免除条項の無効(8条)
 ⅰ)全部免除条項(1項1・3号)
「いかなる場合も一切責任を負わない」  
 との契約は無効です。
 ⅱ)一部免除条項(1項2・4号)
 「事業者の損害賠償責任は○円を限度
 とします」という条項は、事業者側に
 故意や重大な過失があっても一部免 除する条項は無効。(軽過失の免除は有効です。)

②瑕疵担保責任全部免除条項の無効(9条):例えば、「当社は、商品に隠れた瑕疵や欠陥があっても、一切損害賠償、修理、交換はいたしません」という条項は無効です。

③損害賠償額予定条項の無効(9条)
 ⅰ)解除の損害賠償の予定・違約金(1項)→合計が平均的損害額を超えれば、超過部分は無効。
 ⅱ)遅延損害金(2項)→年14・6%超は無効。

  その他にも信義則違反による無効(10条)などの規定もあり、非常に重大な効果を伴う法律です。消費者契約法に関して、契約書や約款の見直しなどの必要がないでしょうか。当事務所では顧問先の皆様には、顧問料の範囲内で無料でご相談に応じさせていただいております。御不明の点がありましたら、どのようなことでも結構ですから御遠慮なくお尋ね下さい。