自転車の交通事故
自転車が加害者となる交通事故に注意しましょう【2013年6月号】
交通事故というと自動車のイメージが強いと思います。しかし、実際には自転車が加害者となることも多く、最近ではニュースでもよく取り上げられていますのでご存知の方もいるかもしれません。今回は、自転車が加害者となる交通事故についてご説明します。
1 民事上の責任
自転車であっても、故意または過失によって損害を生じさせた場合には、不法行為(民法709条)に基づき損害賠償責任が発生することがあり、実際に高額な損害賠償が命じられた具体例としては、以下のようなものがあります。
①60歳の女性が死亡した事故
(約3138万円。さいたま地判平成14年2月15日)
②38歳の女性が死亡した事故
(約6779万円。東京地判平成15年9月30日)
③62歳の男性が死亡した事故
(約4043万円。東京地判平成17年9月14日)
④55歳の女性が死亡した事故
(約5438万円。東京地判平成19年4月11日)
これらの事例を見てもわかるように、自転車事故であっても損害額は高額になります。また、①、③の事例は高校生が加害者となったケースですが、若年者が加害者となることがありますので、自ら注意をすることはもちろん、子どもが加害者にならないように指導をする必要も生じます。また、このような損害賠償に備え自転車を対象とした保険も増えています。
2 刑事上の責任
刑事上の責任として、重過失致死傷罪(刑法211条1項)が適用されることがあります。法定刑は5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金であり、決して軽くはありません。
実際に自転車で事故を起こして逮捕・勾留・起訴されたケースもありますので、自転車だからといって油断していると思いがけず刑事事件に発展してしまうことも考えられます。また、一定以上の刑に処せられたことが資格の制限事由となる場合があります(たとえば、弁護士法7条は弁護士となる資格を有しない者として「禁錮以上の刑に処せられた者」を挙げています)ので、1回の事故がその後の人生に大きな影響を与えることになります。
3 道路交通法の改正
平成25年6月7日、道路交通法改正案が可決されました。改正の結果、自転車の運転に関し危険行為を反復した者に対し、講習を受けるよう命じることができ、受講命令に従わなかった場合には5万円以下の罰金に処せられることがあります。
また、自転車が通行することができる路側帯として、「道路の左側に設けられた路側帯に限る」との限定がなされ、路側帯における左側通行が明示されましたので、この点も注意が必要です。
4 おわりに
東日本大震災以降自転車の利用者が増加していると言われていますが、それに伴い自転車事故に関するトラブルも増えています。たかが自転車と思わずにルールを守って安全運転を心掛け、自分の命を守るとともに他者の権利を侵害しないよう注意していただく必要があります。
また、保険が増えてきたとはいえ、自転車事故は保険ですぐに対応されるケースがまだまだ少ないのが現状です。万が一事故を起こしてしまったような場合には、お気軽にご相談いただければと思います。