放置車両の撤去方法について(池田篤紀弁護士)
放置車両の撤去方法について 【2018年7月号】
弁護士 池 田 篤 紀
1 はじめに
「うちの店舗に車両が長期間放置されていますが、勝手に処分しても大丈夫ですか?」「処分してしまいましたが、大丈夫ですか?」と相談されることがあります。いわゆる「放置車両」問題です。結論からいうと、法的手続きを採らずして、処分してはいけません。放置車両の撤去を専門に取り扱う業者もいるようですが、民法上「自力救済(法の手続きを踏まず、実力で権利行使すること)」は禁止されています。また、自己判断で廃車や撤去してしまうと、後々、所有者から責任を追及される恐れがあるため注意が必要です。例えば、「あの車の中にはダイヤモンドが入っていた。」と主張され、車両以外についても損害賠償請求されてしまう可能性があります。
2 ではどうすればいいか?
(1)まずは110番
まずは、110番して、警察に放置車両によって困っている旨伝えて下さい。仮に、盗難車両や刑事事件に関連する車両であった場合には、警察が放置車両を撤去してくれることがあります。また、そうでなかったとしても、警察が所有者を見つけ出し、所有者に対して注意を促してくれることもあります。しかし、警察は、放置車両が刑事事件に関連しない場合や、所有者が注意に応じない場合には、「民事不介入」を理由に助けてくれないことが多いです。
(2)持ち主を特定し撤去を求める
警察が対応してくれない場合には、土地の所有者が自ら撤去を求めなくてはなりません。そのため、自分で放置車両の所有者を割り出した上で、内容証明郵便等を発送し撤去を求める必要があります。しかし、一般の方にとって放置車両の割り出しは非常に困難です。弁護士であれば、弁護士法23条照会によってナンバープレートから車両の所有者を割り出すことが出来ます。
(3)訴訟提起する
仮に、所有者が判明し、所有者に対して車両の撤去を要求したとしても、所有者がなんら対応しない場合には、所有者に対して土地の明け渡し(放置車両の撤去)や損害賠償を求め、「訴訟提起」し、勝訴判決を得なければなりません。
(4)強制執行する
仮に上記勝訴判決が得られたとしても、これをもってただちに処分することは出来るわけではありません。上記勝訴判決によって所有者が任意に車両を撤去してくれればいいですが、そうでなければ、別途「強制執行」といった手続き等によって撤去するしかありません。
3 最後に
(1)ここまでの説明でも十分分かるよう、一度、車両が放置されてしまえば、適法に撤去するためには時間もかかりますし、費用もかかってしまう可能性があります。かといって放置し続けていたとしても何も解決にはなりません。
(2)そのため、一番の対策は、やはり「放置させない」ことになります。具体的には、見回りを強化したり、防犯カメラを見やすい場所に設置したりすることが有効な方法になるでしょう。