どうなる?「離婚後共同親権制度」【2025年11月号】弁護士杉浦宇子

 

1 いよいよ施行

 令和6年5月、「離婚後共同親権制度」を導入した民法等の改正法が成立・公布され、そこから2年以内に施行される予定となっていましたが、令和8年4月1日から施行されることになりました。

 

2 原則共同親権ではなさそう

 「離婚後共同親権制度」が施行されるとはいえ、これまで離婚後は単独親権のみだったものを、共同親権のみとするものではなく、協議上の離婚をするときに、離婚後に父母の双方を親権者とするか、はたまた一方のみを親権者とするかも協議で決めましょうという制度になります。いわば「選択的離婚後共同親権制度」といえるでしょう。

 ただ、我々弁護士のところに相談に来て離婚の調停や裁判をするケースでは、双方話し合ってどちらかに決めるのが困難だろうなと想像します。当事者で話し合って離婚ができるような関係の当事者は、弁護士に相談は来ないですから。

 

3 裁判所はどう判断する?

 改正法でも親権者を定めないで離婚はできませんから、単独親権にするか共同親権にするか話し合いで決められないと、離婚裁判をして裁判所に判断してもらわなければなりません。裁判所は一体どのような基準で離婚後に単独親権とするか共同親権とするかを判断するのでしょうか。

 改正民法819条7項は、裁判所が判断するにあたって、「子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。」としつつ、

①「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。」(同項1号)ex.子ども虐待

②「父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(略)を受けるおそれの有無…協議が整わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。」(同項2号)ex.DV

の「いずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」には、単独親権の判断をしなければならないとされています。

 前記各号は、例示ですから、これに該当しない場合でも、共同親権とすることにより子の利益を害すると認められるとき、単独親権としなければなりません。

 

 裁判所の調停を経ても親権についての合意ができず対立しているケースは感情的な対立が激しい高葛藤の場合が多く、そのような場合、合意どころか話し合いも容易ではないので、共同親権にすることが子の利益に適うと判断するのは難しいように思われます。

 関係省庁の会議では高葛藤ケースでも調停手続の過程で感情的な対立が解消されるケースもあり得ると想定されているようですが、果たして現実はどうでしょうか。

 

 実務の蓄積を見ないうちでは不安もつきませんが、裁判所だけでなく、当事者も弁護士も「何が子どもの利益のためか」をより考えることが、実際に子どものためになっていくとよいと思います。