示談と守秘義務【2025年3月号】弁護士池田篤紀
1 はじめに
最近の報道において、示談(和解)と守秘義務が注目されています。報道に関連して、皆様から多くのご質問をいただいておりますので、今回は、示談の基本的な仕組みと守秘義務の法的な意味について解説します。
2 示談とは
示談とは、当事者間で紛争を解決するための合意のことを指します。当事者双方が譲歩し、合意に至ることで法的に有効な示談という名の契約が成立します。示談の内容は裁判所等の関与なく当事者が自由に合意できますし、裁判と比べて短期間での解決が期待できますし、訴訟費用などのコストも抑えられます。また、金銭解決を前提とする判決と異なり、謝罪や改善内容など多様な条件も設定できます。守秘義務もその条件の一つです。そのため、事実関係、法的責任、支払う金額、その他条件などが譲歩できうる事案においては、示談はとても意義があるものです。
3 守秘義務とは
前述のとおり、示談の際、前述の「守秘義務」が合意内容に含まれることがあります。これは示談の内容や交渉過程を第三者に開示しない義務を意味します。守秘義務が設けられる理由としては、①当事者のプライバシー保護(関係者が不必要な注目を浴びることを防ぐ)、②名誉や信用の維持(企業や個人が社会的評価を損なわないようにする)、③円滑な合意の実現(情報が外部に漏れないことで、双方が安心して交渉できる)が挙げられます。
4 守秘義務に違反した場合
守秘義務に違反した場合、これにより相手方が被害を受けた場合、賠償責任を負う場合があります。しかし、示談の内容や交渉過程を第三者に開示された場合に、賠償請求しようにも、開示されたことによって被った経済的損害及びその額を具体的に「立証」することは非常に困難です。損害が立証できないため、示談をしても言われ放題になってしまう可能性もあります。そのため、示談においては、かかる立証負担の軽減や示談の目的を達成するために、守秘義務に違反した場合のペナルティを具体的に定めておくことがあります。例えば、相手方が示談の内容等を第三者に開示した場合、その損害の有無にかかわらず、1件あたり金〇〇〇万円の違約金を請求するといった内容です。当然、ペナルティを設けるか否かは事案の内容、当事者の意向によって異なりますが、ペナルティを設けることによって、第三者に開示しないような抑止力にもつながります。
5 最後に
以上、示談と守秘義務の基本的な法的意味について説明しましたが、当事者間において、①事実関係の対立、②法的評価の対立があるからこそ紛争になるため、その状態から示談にまで持っていくのは非常に大変です。また、示談に至ったとしても、これを書面化することなく、口頭で合意した場合には、後々紛争が拡大する可能性もあります。法的紛争に発展した場合には、やはり専門家にご相談いただくことをお勧めします。