共有状態の解消について【2021年7月】弁護士池田篤紀

 2021年1月号のニュースレターでご紹介しましたが、不動産の「共有」は、共有不動産の使用方法で共有者の意見が異なることが多く、予期せぬ紛争に発展することがあります。一方、共有状態は自然には解消されません。では、どのようにして共有状態を解消できるのでしょうか。

 

1 共有物分割の方法について

 共有状態の解消の方法、つまり、「共有物分割」の類型として、①現物分割、②換価分割、③価格賠償という3つの方法があります。

 ① 現物分割

 現物分割とは、共有不動産を共有持分の割合に応じて、物理的に分ける方法です。例えば、1つの土地につき3名の共有持分者がいる場合、その持ち分に応じてA・B・Cの3つの土地に分けます。この方法は、分かりやすいものの、建物を分けることは難しいですし、土地の性質(建築制限、接道、立地)次第では、現物分割できない場合もあります。また、土地の「分筆」が必要不可欠のため費用も時間もかかります。

 ② 換価分割

 換価分割とは、共有不動産を「第三者」に売却し、売却代金を共有持分割合に応じて共有者で分けあう方法です。建物の場合でも利用しやすいですし、土地の性質による不公平もなく、現物分割と比較して公平です。ただし、条件に合う買い手が見つからず、期待した金額を取得できないことがあります。

 ③ 価格賠償

 価格賠償とは、共有不動産を共有者1名だけの所有物として、取得した者は他の共有者に対して各自の持分に相当した代金(代償金)を支払う方法です。共有状態から生ずる問題の多くは、共有持分者1名が単独で不動産を使用していることから発生するため、そういった場合の解決方法としては最適な方法です。しかし、単独で所有しようとする者が他の共有持分者に対して代償金を支払うことになるため、その資金を準備できるかどうかがネックとなります。

2 共有物分割に向けた手続きについて

 共有物分割の方法には前記3類型がありますが、共有物分割に向けた手続きは、主に、①「話し合い」(裁判所が間接的に関与する場合も含みます。)、②「判決」の2つがあります。

 ① 共有物分割協議

 まずは、共有者全員で上記3類型の具体的な内容を協議します。全員が合意すれば、共有物分割が成立します。ただし、共有者一人が話し合いに非協力的であれば、合意できません。その場合、裁判所が協議に「間接的に」関与する「民事調停制度」を利用することが有益です。

 ② 共有物分割訴訟

 共有物分割方法について共有者一人でも反対すれば、共有状態を解消することはできません。その場合には、訴訟を提起し、裁判所が「判決」として、共有不動産の分割類型及び具体的な内容を決めます。前記3類型のいずれかになるかは、各人の主張、不動産の構造・性質、使用状況等によって総合的に判断されます。