離婚に関するよくある誤解(弁護士池田篤紀)

離婚に関するよくある誤解【2019年9月号】(弁護士池田篤紀)

 

 当事務所においては、結婚生活や離婚 に関する法律相談もいただくことがあります。離婚は結婚の3倍は大変と言われ ますが、個人的にはもっと大変だと思います。個人的な感想ですが、結婚するときの5倍、結婚生活の2倍は大変なので はないかと思います。皆様のご家庭は円満かと思いますが、念のため、結婚生活、離婚について、皆様がよく誤解され ている点について簡単にご説明します。

 

Q1 夫婦仲が悪く、ろくに会話もして いません。家庭内別居の状態です。その ため、第三者と交際しています。問題な く離婚できますか?慰謝料請求されませ んよね?

 

A1 一般に、上記のような事案の場合、婚姻関係が破綻していなければ、離 婚事由には該当しませんし、慰謝料請求も認められる可能性が高いです。この婚姻関係破綻と、一方が破綻していると感 じていたとしても、当然に認められるも のではなく、客観的に判断される極めて厳格な要件です。一緒に生活している、 ご飯も共にしている、洗濯もしてもらっ ている、財産を一方の配偶者が管理して いるなどのいずれかの事情があれば、ご 自身が家庭内別居しているため、婚姻関 係が破綻していると思っていても、実際 には婚姻関係が破綻していないと評価され、離婚事由に該当しない可能性が高い です。また、交際相手と共に慰謝料請求 される可能性もあります。

 

Q2 私の方が稼いでいるのに財産分与 が2分の1となるのはおかしくないですか?

 

A2 婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を離婚時に清算することを「財産 分与」といいます。財産分与の割合は、 法律上決まってはいませんが、夫婦の収入の多寡にかかわらず、原則として2分 の1とされています。「一方が働きに出 てお金を稼ぐことができているのは、そ の間、他方が家庭を支えていてくれるか らだ」という考えがあるからです。しかし、裁判所を介した財産分与であれば、 個別具体的な事情(家事の貢献度など)が考慮されることになるため、極めて例 外的な場合ですが、2分の1にならない 場合もあります。

 

Q3 離婚した妻が子供と会わせてくれ ないので、養育費を支払わなくてもいい?

 

A3 養育費請求権は財産的な権利であ るのに対して、面会交流権は人格的な権利とされます。すなわち、養育費の支払 いと面会交流権はまったく別のものです。そのため、夫婦間において、特段の 合意がない限り、養育費が払われないか ら面会交流を拒否できる、面会拒否され るから養育費を払わなくてもいい、といった関係には立ちません。なお、調停 や公正証書で養育費の支払方法等につい て取り決めていた場合には、養育費の支払いを怠ったとき、給料を一定額差し押 さえられてしまう可能性があります。気を付けましょう。 上記のような各誤解から離婚問題等がさらに困難になってしまう可能性があり ますので、くれぐれもご注意ください。