未成年後見制度について

未成年後見制度について 【2012年9月号】

弁護士  杉   浦   宇   子


1 「未成年後見人」とは?

 未成年者が、契約等の法律行為をするには、法定代理人の同意を得なければなりません(民法5条1項・2項)。これは、未だ判断能力の未熟な未成年者を保護するためのルールです。
 未成年者に親権者がいるときは、親権者が未成年者の法定代理人となります。親権者(父母や養親)がいないときや、いても管理権を持たないときには、法定代理人がいなくなってしまい、未成年者の保護に欠けることになります。このようなときに、未成年者の法定代理人となるのが、未成年後見人です。
 昨年の大震災後には、両親とも亡くされたお子さんの保護のため、未成年後見人の必要性が高まるだろうと言われました。

2 未成年後見人には、どんな権限があるのです?

 未成年者のために、未成年者を監護養育したり、未成年者の財産を管理したり、契約等の法律行為を行う権限があります。この権限は、「親権」と同じく、子の利益のために行使する義務を負うものです(民法820条)。

3 未成年後見人をつけるにはどうしたらいいの?

 親権を最後に行う人は、遺言で、自分が亡くなった後の未成年者の未成年後見人を指定することができます(民法839条)。
 未成年後見人を指定する遺言がない場合に未成年後見人を選任するためには、家庭裁判所に未成年後見人の選任を請求しなければなりません。この請求を受けて、家庭裁判所は審判で未成年後見人を選任します。
 未成年後見人選任の請求ができるのは、未成年者本人、未成年者の親族、その他利害関係人(以上、民法840条1項)、児童相談所長(児童福祉法33条の8)です。

4 どのような人が未成年後見人に選任されますか?

 誰を未成年後見人に選任するかは、家庭裁判所が審判で決めます。その際、家庭裁判所は、未成年者の年齢や心身の状況、生活や財産の状況、未成年後見人となる人の職業や経歴や未成年者との利害関係、未成年者の意見その他一切の事情を考慮して、適切な人を未成年後見人として選任します。
 親族が未成年後見人になることも多いですが、弁護士が選任されることもあります。また、法人も未成年後見人になることができます。
 未成年後見人選任申立の際に、申立人が考える候補者を記載しておくこともできますが、候補者が必ず選任されるわけではありません。

5 未成年後見人に選任されたたら、どのようなことをするの?

 未成年後見人に選任されたときには、10日以内に戸籍の届出をする必要があります(戸籍法81条)。
 そして、選任後1カ月以内に未成年者の財産を調査して財産目録を作成し、未成年者の毎年の収支予定を策定して家庭裁判所に提出します。その後も、定期的に(少なくとも年に1回くらい)、財産の現状と前回報告以降に行った後見業務の報告書の提出が求められます。
 例えば、未成年者所有の不動産の売却など、大きな財産を処分するときには、事前に家庭裁判所に相談する必要があります。そのほか、後見業務を行うにつき、分からないことなどあるときには、遠慮なく家庭裁判所に相談をするのがよいでしょう。
 未成年者の財産を横領するなど不正な行為があると、未成年後見人を解任されるほか、民事や刑事の責任を追及されることもあります。
 未成年者が20歳になると、未成年後見人の法定代理人としての任務は終了します。