任意後見制度

成年後見制度-任意後見をご存じでしょうか 【2014年2月号】

 

 弁護士  今   井   千   尋

 

 社会の高齢化に伴い、判断能力が低下した高齢者をサポートする成年後見制度は今後ますます重要度を増すものと思われます。今回は、成年後見の中でも、一般にはあまり知られていませんが、有用な「任意後見」についてご紹介したいと思います。

1 任意後見とは


 
任意後見とは、将来の、精神上の障害によって判断能力が不十分な状況において後見事務(生活、療養看護及び財産の管理に関する事務)を行ってもらう任意後見人を任意後見契約によってあらかじめ定めるものです。

 任意後見「契約」を締結するものですから、本人に一定程度の判断能力が残っていることが必要です。


2 任意後見のメリット


 
家庭裁判所が後見人を選任する法定後見と異なり、本人が自ら後見人となる者との間で契約を行いますので、本人が信頼している方を選ぶことができます。やはりこの点が最も大きなメリットです。また、任意後見契約において定めることにより、自らの意思で後見事務の進め方や報酬などに関する取り決め(財産の管理方法や報酬の有無、報酬額など)を行うことができます。

3 任意後見契約の類型


 
一般に、①将来型、②移行型、③即効型の3類型に分けられると言われています。

 ①
将来型とは、任意後見契約の締結時には後見人に事務を委託せず、将来判断能力が不十分な状況になった時に初めて後見人によるサポートを受けようとするものです。

 ②
移行型とは、任意後見契約の締結時に財産管理等の事務を委託し(委任契約等によります)、判断能力が不十分な状況になった時以降もそのまま後見人としてサポートをしてもらうものです。

 ③
即効型とは、任意後見契約の締結時に既に判断能力が不十分であり、契約締結後直ちに後見人によるサポートを受けようとするものです。

4 注意点

 ①
任意後見契約は、公正証書により行う必要があります。

 ②
信頼できる方に後見人となることを承諾してもらう必要があります。

 ③
私見ですが、即効型の任意後見契約はなるべく避けた方が良いのではないかと思います。すなわち、即効型の任意後見契約は、「本人の判断能力が不十分である」が「任意後見契約を締結することができる程度には判断能力が残っている」状態でなされるものですが、実務上そのような状態であったことを証明することは困難と思われるからです。

 その意味で、任意後見の利用をお考えの方は、十分判断能力があるうちに将来型又は移行型の任意後見契約を締結することをお勧めします。