高齢者雇用安定化法の改正
高齢者雇用安定化法の改正~65歳までの雇用確保義務化【2012年9月号】
1.希望者全員を65歳まで雇用するような措置をとることを事業主に義務付ける「高齢者雇用安定化法」の改正法が、平成24年8月29日に国会で成立しました。
2.これまでも、「高齢者雇用安定化法」は、65歳までの雇用を確保するため、継続雇用制度の導入などを事業主に義務付けていました(これは平成16年に成立しました)。
ただ、65歳までの継続雇用制度の導入にあたって、労使間で労使協定を結べば、希望者全員を再雇用せず労使協定で定めた基準を満たす者のみに限定することが認められていました。
3.今回の改正法は、そのような基準を設けることは継続雇用制度の「抜け道」を認めるものだという批判に基づき、労使協定により基準を設けることを禁止し、希望者全員を継続雇用制度の対象とするものです。
改正法は、平成25年4月1日から施行されますので、労使協定で継続雇用制度の対象者について基準を設けている事業主は、早急に見直しを検討しなければなりません(但し、経過措置もあるため、今すぐ撤廃すべきかどうかは、検討の必要があります)。
4.このように65歳までの雇用を確保する制度が導入される背景には、年金の支給開始年齢が段階的に65歳まで引き上げられることにあります。
60歳で定年を迎え、その後65歳の年金支給開始まで無収入の状態となることを防ごうというものです。
5.もっとも、このような法律改正の目的については、年金支給開始年齢の引き上げによる不利益を、個々の民間企業の負担によりカバーするもので、本来国がやるべき役割を民間に押しつけており、企業の負担が重すぎるという批判も根強くありました。
このため、今回の改正法は、国会の審議の中で修正が加えられ、「心身の故障のため業務遂行に堪えない者」などについて、65歳までの継続雇用制度の対象から除外することを認めるような内容となりました。この点の内容如何によっては、「希望者全員」の継続雇用の義務化とは言えないかも知れません。
もっとも、この点は、今後、厚生労働省が「指針」を作ることになっており、現時点では、まだ詳しい内容は分かりません。今後フォローしてゆく必要があると考えています。