テレワークという働き方【2021年8月】弁護士坂典子

1 はじめに

 先日、ニュースで、アメリカのIT大手「グーグル」が、在宅勤務を続ける従業員に対して、住む場所に応じて給与を最大で25%削減する方針であると報道されました。

 日本でもコロナ禍の昨今、政府はテレワークの積極的な活用を強く呼びかけています。

 そこで、実際に会社がテレワークを導入にあたってどのような課題を検討する必要があるのかについて、厚生労働省の「テレワークモデル就業規則(以下、「モデル規則」と言います。)」を参考に検討していきます。

 

2 テレワークモデル就業規則

(1) 定義(モデル規則第2条)

 テレワーク勤務には、在宅勤務(自宅、その他自宅に準じる場所での勤務)、サテライトオフィス勤務(所属事業場以外の会社所有施設等での勤務)、モバイル勤務(所属事業所以外のサテライトオフィス以外の場所での勤務)があります。どれをテレワークとして認めるのかを定める必要があります。

(2) 対象者(モデル規則第3条)

 テレワーク勤務の対象者を様々な条件で絞り込む必要があります。条件は、どのような目的(生産性向上・コスト削減、育児・介護を理由とする離職防止等)で導入するかによって変わります。災害時といった非常時限定で対象者を定めることも可能です。

(3) 申請手続(モデル規則第4条

 テレワーク勤務を希望する従業員に対し、会社がテレワーク勤務を認めるかを判断する必要があります。その際、個別に、テレワーク勤務時の作業環境・セキュリティ環境やテレワーク勤務で行う業務について確認する必要があります。

(4) 労働時間(モデル規則第7条)

 労働時間は、オフィスでの勤務時と同じであれば別途定める必要はありません。テレワーク勤務時に限り、フレックスタイム制や事業場外みなし労働時間制を導入するなどのアレンジを加えることもできます。

(5) 時間外・休日・深夜労働(モデル規則第10条)

 時間外・休日・深夜労働には、事前許可を必要としたり、原則禁止することも考えられます。テレワーク勤務における長時間労働の防止や会社の管理のしやすさといった観点から検討する必要があります。

(6) 始業・終業時刻の確認(モデル規則第11条)

 導入されている企業では、電子メールでの管理が多いようです。始業・終業時刻の確認方法は、会社の実情に即して定める必要があります。

(7) 業務報告・連絡体制(モデル規則第12・13条)

 物理的に上司と離れた場所で業務を行う従業員にとって、日常のコミュニケーションが取りづらい分、日常の業務報告や緊急時の連絡手段には工夫が必要です。

(8) 機器等の準備・費用負担(モデル規則第14・15条)

 テレワークには当然パソコン等の機材が必要です。機器の準備や費用を誰が負担するのかを予め定めておく必要があります。水道光熱費やネット利用料金も費用の一例といえます。給料との関係で、通勤手当に代え在宅勤務手当の支給も考えられます。

 

3 最後に

 テレワーク導入に伴う就業規則の変更は、社内におけるテレワーク導入の最終段階といえます。ここに至るまでには、労務管理やコミュニケーションの方法、業務環境・セキュリティ環境等の様々な課題を検討してテレワークの体制を構築し、従業員に対する教育・研修を行い、制度を周知させることが必要となります。

 政府は、テレワークの活用を声高に呼びかけていますが、実際に導入するとなると会社における1つのビッグプロジェクトといえそうです。