使ってみませんか子どもの手続代理人(杉浦宇子弁護士)
使ってみませんか子どもの手続代理人 【2018年2月号】
1 子どもの手続代理人とは
未成年者は、原則的には手続行為能力を認められておらず、その権利利益を守るための手続は法定代理人がこれを行うことになりますが、平成25年に施行された家事事件手続法では、一定の場合には未成年者に手続行為能力を認めて、子ども自身が手続に関わることができるよう子どもの手続代理人の制度を採用しました。
面会交流や親権の帰趨を決める手続の場合、その子どもはその結果の影響を直接受けることになりますから、自分の意思を表明できる子ども(概ね小5以上の学齢)には、その子どもの意思を表明する機会を与えることが適切であるとの考えで、この制度が採用されました(子どもの意見表明権の手続的保障)。
2 こんな場合に使えます
【事案】母Aと父Bの関係が悪化し、Aが子どもYを連れて家出をしました。AはBに対しYの親権者をAと定めての離婚を求める調停を申し立てました。これに対し、Bは、「離婚は応じるがYの親権者はBがなるのが相当であり、仮に親権者となれないときには十分は面会交流をさせるべき」と主張しました。
調停では、Aが「YはAと一緒に暮らしたいと言っており、Bとは会いたくないと言っている。」と述べ、Bは「YはBと仲が良かったからそのようなことを言うはずない。もし言ったとしたら、Aが言わせたのだ。」と述べ意見が対立したので、家庭裁判所は調査官に子どもの意向等を調査させ、調査官が子どもに面接する等の調査をした結果、「Aを親権者とするのが相当で、Bとの面会交流は月1回4時間程度が相当」との報告が出されましたが、Bは納得できませんでした。
これはよくある事例ですが、このようなときに子どもに手続代理人制度を利用すれば、より子どもの利益を重視して当事者が合意に達することができる可能性が増えるのではないかと考えています。
子どもの手続代理人は、AともBとも利害関係のない弁護士から選任されます。選任された弁護士は、子どもに複数回会いに行って、子どもと信頼関係をつくるべく、仲良くなるよう努めます。
子どもは、両親の争いで傷ついたり、不安を抱えていることが多いですし、自分に意見表明権があり、それが手続の中で尊重されるべきものだということも知らない場合もありますから、手続代理人は、子どもに分かるように子どもの置かれている状況を説明し、丁寧に質問に答え、子どもが自分の権利や手続に参加する意味を理解できるようにし、子どもの意見の把握に努めます。把握した子どもの意見をどのように手続に反映させるかも子どもと相談します。
3 この制度は、まだまだ裁判所にも弁護士にも認知度が低く、利用数は少ないですが、利用されたケースでは、両親もより子どもの気持ちを考えて自分たちが子どものためにどうしたらいいかを考えてくれ、より良い解決になることが多いと思います。制度のことがもっと知られ活用されることを期待しています。