委託先の事故は 「他人事」 ではない【2026年7月号】弁護士池田篤紀
1 はじめに
近時、部活動の送迎バス事故に関連して、「運行を委託していた会社が必要な許可・免許を有していたのか」という点が問題となる事案が報道されています。
企業活動においても、運送、建設、産業廃棄物処理など、許可・免許が必要な業務を外部委託する場面は少なくありません。もっとも、発注会社側では、「専門業者に委託していた」「契約上、委託先の責任となっている」という認識から、自社の責任までは問題にならないと考えているケースもあります。
しかしながら、法的には、委託先は発注会社の業務遂行を補助する「履行補助者」と評価されることが多く、委託先による事故や不適切対応についても、原則として発注会社側が責任を負います。例えば、送迎業務を委託したバス会社による事故、配送委託先による事故、下請業者による施工不良などについて、「委託していたので当社は無関係」という主張は、原則として認められません。
2 「免許確認をしていれば大丈夫」ではない
⑴ そして、冒頭にあげた事故を契機として、「委託先が必要な許可・免許を持っていることを確認していれば問題ないですか」という質問を受けることがあります。しかし、この点についても、許可・免許を確認していれば当然に責任を免れる、というものではありません。
前述のとおり、委託先は発注会社の履行補助者として評価されることがあり、委託先による事故や不適切対応については、原則として発注会社側も責任を負います。そのため、「許可を確認していた」という事情のみをもって、免責されるわけではありません。
⑵ もっとも、必要な許可・免許を確認していたかどうかが無意味というわけでもありません。仮に事故やトラブルが発生した後に、実は委託先が必要な許可・免許を持っていなかったことが判明した場合には、「そのような業者へ委託していたこと自体」が、別途法的問題となる可能性があります。特に、許可の有無を確認していなかった、委託先の実態を十分確認していなかったなどの事情がある場合には、「確認を怠ったこと」自体が法的に問題視されることになります。そのため、許可・免許や委託先の実態について確認しておくこと自体は非常に重要です。
3 法的責任だけでなく「信用問題」にも発展する
⑴ また、これらの問題は単なる法的責任にとどまりません。事故後に「実は無許可業者だった」という事実が判明した場合には、顧客・取引先・監督官庁・報道機関などから、「なぜそのような業者へ委託していたのか」という点が当然ながら強く問題視される可能性があります。その結果、企業としての信用低下、取引継続への影響につながる可能性もあります。すなわち、本来は賠償問題にとどまるはずだった事案が、取引停止や信用不安にまで発展する可能性があります。
⑵ そのため、外部委託を行っている業務については、今一度、委託先が必要な許可・免許を有しているか、更新期限が切れていないか、再委託の有無、再委託先を含めた管理状況などを確認しておくことが重要です。法的責任だけでなく、企業としての信用維持という観点から、委託先管理体制について今一度見直しておくことをおすすめします。
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