バーチャル株主総会について【2021年9月】弁護士安田剛

1.はじめに

 新型コロナへの感染対策から、ZOOMなどオンラインで会議をすることが増えましたが、今回は、株主総会についてオンラインを活用して開催する「バーチャル株主総会」をご紹介します。

 

2.バーチャル株主総会

昨年2月26日に、経済産業省から「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」が公表されています。

 これによると、取締役や株主等が一堂に会して開催する株主総会を「リアル株主総会」と呼ぶのに対して、インターネット等の手段を用いて、物理的な場所に一堂に会さずに開催される株主総会を「バーチャル株主総会」と呼んでいます。

 さらに、「バーチャル株主総会」は、リアル株主総会とバーチャル株主総会を併用する「ハイブリッド型バーチャル株主総会」と、リアル株主総会を開催せず、完全にオンラインのみで株主総会を開催する「バーチャルオンリー型株主総会」に分けられています。

 また、「ハイブリッド型バーチャル株主総会」は、インターネット等の手段で参加する株主について、会社法上の「出席」と認める「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」と、会社法上の「出席」とは認めない「ハイブリッド参加型バーチャル株主総会」とに分けて整理されています。

 

  ① リアル株主総会リアルのみ

  ② ハイブリッド型バーチャル株主総会リアルバーチャル

  ⑴ハイブリッド参加型バーチャル株主総会

   →会社法上の「出席」は不可(バーチャルでの参加(傍聴のみ)を認める)

  ⑵ハイブリッド出席型バーチャル株主総会

   →会社法上の「出席」を認める(バーチャルでの議決権行使、質問・動議の提出ができる)

  ③ バーチャルオンリー型株主総会バーチャルのみ

 

3.バーチャルオンリー株主総会

現行の会社法では、バーチャル空間のみのバーチャルオンリー株主総会の開催は認められないと解釈されています。会社法では、株主総会を招集するには、株主総会の「場所」(物理的な場所が必要)を定めなければならないとされているためです。

 しかし、上場企業に限った話ですが、本年6月9日に成立した産業競争力強化法改正案により、経産大臣と法務大臣の確認を受けることなど一定の要件のもと、「場所の定めのない株主総会」として、バーチャルオンリー株主総会の開催が認められることになっています。本年6月の株主総会で10社の上場会社でバーチャルオンリー株主総会を可能とする定款変更がなされているようで、今後、バーチャルオンリー株主総会の実例も出てくると思われます。

 

4.バーチャル株主総会運営の留意点

 インターネット等の手段を通じて参加・出席する株主の本人確認(なりすまし防止)、事前の書面投票や電子投票と総会当日の議決権行使との関係の整理、質問・動議の取扱いなど、バーチャル株主総会では、リアルに開催する場合とは違う点に留意し、準備しておく必要があります。

 特にバーチャルでの総会出席を認める「出席型」のバーチャル株主総会を開催する場合には、以上のような点で不備があると、株主総会の取消事由となる場合も考えられますので、慎重な対処が必要です。

 

5.さいごに

 新型コロナの感染対策の意味では、株主全員の同意が取れるようであれば、書面決議(みなし決議)により、リアルに一堂に会さなくても株主総会の決議を行うことが可能です。

 株主全員の顔が見える中小企業においては、色々な準備が必要となるバーチャル株主総会よりも、書面決議のほうが実務上は有用かつ簡便かも知れません。