災害法務Q&A② 災害=不可抗力?【2023年9月号】弁護士池田篤紀

 

 昨今、ゲリラ豪雨や台風、全国各地で震度4から6程度の地震が沢山発生しています。このような災害が発生し、これにより契約上の義務が履行できなかった場合、取引先に対して賠償責任が発生するのでしょうか。

 まず、重要なのは、常に、災害=不可抗力(賠償責任がない)になるわけではないということです。仮に災害により義務が履行できなかったとしても、別途法律上の定めや契約書に定めがない場合、「契約その他債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰すべき事由」(以下、帰責性といいます。)が認められれば、取引先に対して債務不履行に基づく損害賠償責任を負う場合があります。

 では、どのような基準で帰責性の有無は判断されるのでしょうか?契約書に定めがある場合もありますが、一般に、災害が生じた際の帰責性の有無は「通常想定される事態に対応できる程度の必要な措置を講じていた」か否かで判断されています。すなわち、原因となった災害が起こりうることを予測することができたか、それに対して必要な措置を採っていたかなどで判断されます。

 東日本大震災のような「大地震」のような災害の場合は、予見困難、対策困難のため、一般に帰責性がない、不可抗力と判断される可能性は高いと考えられます。しかし、前述の「ゲリラ豪雨」「台風」「震度4から5の地震」などが原因で、商品の発送ができなくなった、保管していた商品が破損してしまった、建設中の建物が倒壊したという場合には、これら災害が昨今頻繁に起きている以上、大地震と比べて話は難しくなるのではないでしょうか。また、通常予見・想定すべき事態(災害)はどのような内容なのか、これら事態に対応できる措置の内容はどのようなものか、これは契約内容や業種ごとでも変わってきます(そもそもとして、業種によっては災害に対応すべき措置の内容が法律上義務づけられている場合もあります。)。つまり、どのような災害であれば、これをすれば問題がない、と一概にいえるものではないのです。

 実際に災害は頻繁に起きており、かつ、災害の発生を予見することは難しいです。しかし、前述のとおり、災害=不可抗力と認定されるとは限りません。本当に怖い話です。そのため、会社としては、契約上の義務が履行できるような対策を、出来る限り、出来うる方法にて取っておくべきです。また、仮に義務履行ができなかった際の責任追及に備えて、保険加入についても検討した方が安全でしょう。業種によっては、保険に加入することが法律によって義務づけられている場合もありますので、ご注意ください。

 なお、災害が不可抗力と判断された場合の取引関係の問題(履行できなかったが、代金は支払ってもらえるのかなど)は、主に「危険負担」という考え方に処理されます。この点は今後説明させていただく予定です。