民法(債権法)の改正~賃貸借契約の改正ポイント(弁護士安田剛)

民法(債権法)の改正~賃貸借契約の改正ポイント 【2019年5月号】 弁護士 安田 剛

 

 来年(2020年)4月1日に施行される民法(債権法)の改正について、今回は賃貸借契約関係の改正ポイントをご紹介します。

 

1.賃貸借の存続期間

 旧法では、賃貸借の存続期間の上限は20年とされていましたが、新法では50年に伸長されました。

 もっとも、従来から借地借家法という民法の特別法において、建物所有目的の土地賃貸借契約や建物の賃貸借契約では、存続期間の上限は定められていませんでした。

 従って、今回の改正により実益があるのは、建物所有を目的としない土地賃貸借の場合(例えば、ゴルフ場の敷地や太陽光パネル設置など)となります。

 

2.賃貸借終了時の原状回復義務

 旧法では、賃借人の原状回復義務について明確な規定がありませんでしたが、新法では明記されました。

賃貸借終了時における賃借人の原状回復義務の範囲について、従来からの判例実務に従い、通常の使用方法によって生じた賃借物の損耗や経年変化については、原状回復の対象に含まれない旨が明記されました。また、賃借人の責めに帰することができない事由による賃借物の損傷も原状回復の対象外である旨が明文化されました。

 

3.個人根保証契約の極度額

これは賃貸借契約に限定した改正ではありませんが、新法では、個人が保証人となる根保証契約(例えば、賃貸借契約から生じる一切の債務についての連帯保証など)においては、極度額の定めを置く必要があります。

 このため、賃貸借契約書において連帯保証の条項を設ける場合には、以下のような内容とする必要があります。

 

(見直し条項案)※太字部分を追加

 連帯保証人は、賃借人と連帯して、本契約から生じる賃借人の一切の債務を極度額●●円を限度として保証する。

 

 極度額とは保証人の負担の上限金額のことです。新法では極度額の定めがないと保証契約が無効となるため注意が必要です。

 

4.保証委託時の情報提供義務

事業のため賃貸借契約を締結する場合(例えば、店舗を営む場合や事務所を借りる場合など)、賃借人から頼まれて保証人となる者に対し、主債務者である賃借人の財産状況等に関する情報提供を行う必要があります。

 仮に、この情報提供が不十分である場合に、賃貸人がそのことを知っていたか、または知り得たときは、保証人は保証契約を取り消すことができることになりました。

 

5.その他

 その他にも、賃貸借契約関連では、敷金に関する規定が整備されたことや、転貸借に関する規定など、いくつか改正された点があります。

 ただ、いずれも、基本的には従来からの判例や一般的な見解を明文化したものが多く、不動産賃貸借の契約書などで見直しが必要となるのは、前述した連帯保証人の条項などが中心となります。

 このように民法改正に合わせて契約書の内容を見直す必要もあります。