空家対策法について(今井千尋弁護士)
空家対策法について 【2017年8月号】
私は、縁あって、平成28年12月から愛知県内の某市の空家等対策協議会の委員を務めさせていただいています。この空家等対策協議会は空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空家対策法」といいます。)7条1項に基づき設置された機関であり、市が策定した空家等対策計画の実施等に関する協議を行っています。そこで、今回は、一度は名前を聞いたことがあるが詳しくは知らない、そんな空家対策法についてご紹介したいと思います。
1 空家対策法とは?
適切な管理が行われていない空家等が防災や衛生等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしているとの認識を背景に、国や市町村による空家等に関する施策を推進するために必要な事項を定める法律です。この法律においては、国による基本指針の策定や市町村による計画の策定などが定められていますが、市民生活に直接関係するという意味で最も注目されるのは、「特定空家等に対する措置」(14条)です。
2 「特定空家等」とは?
「特定空家等」とは、次のいずれかの状態にある空家等(建築物またはこれに附属する工作物であって使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地)です。
①そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
②著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
ただし、上記①~④だけでは要件として必ずしも明確ではありませんので、ガイドラインによって参考となる基準が示されています。例えば、①に該当する場合として、「基礎に不同沈下がある」、「柱が傾斜している」、「土台が腐朽または破損している」、「壁体を貫通する穴が生じている」といった場合が挙げられています。そして、このガイドラインを受け、地方自治体によっては、具体的な数値や判断マニュアルが定められている場合もあります。
3 「特定空家等」に認定されるとどうなる?
自己が所有または管理する建物等が「特定空家等」に該当する場合、市町村長から除却、修繕、立木竹の伐採その他の措置をとるよう助言または指導を受けることがあります。そして、助言や指導を受けても改善されない場合は勧告を受けることがあり、勧告に従わない場合には命令を受けることがあります。命令に従って措置を行わない場合や措置が不十分な場合などには、代執行といって市町村が所有者等に代わって措置を行うこともあります。
4 「特定空家等」に該当しなければ何もしなくて良い?
空家対策法3条では、空家等の所有者または管理者は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう空家等の適切な管理に努めるものとされていますので、「特定空家等」に該当しなくても、適切な管理を行う必要があります。したがって、周辺住民から苦情を受けた場合などは、放置せず、必要な措置を行うよう努めましょう。
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