民法(債権法)の改正
民法(債権法)の改正 【2014年10月号】
本年8月26日に法務省の法制審議会で、民法改正案の要綱仮案が決定されました。来年2月に要綱化され、通常国会への法案提出が予定されているようです。
民法が改正されることになれば、1896年(明治29年)に制定されて以来、初めての抜本的な大改正です。
今回改正の対象となっているのは、民法の債権法に関する部分です。
民法の債権法に関する部分は、日常生活や企業の契約に関する法的ルールを定めています。例えば、物を売り買いするのは売買契約、マンションの部屋を借りるのは賃貸借契約、お金を貸し借りするのは消費貸借契約、私たちの様々な経済活動は全て契約が関わってきます。
このような契約に関するルールを定めているのが民法(債権法)ですが、実は120年以上も前の明治時代に作られたままで、大きな改正は為されてきませんでした。
そこで、今日の社会情勢に適合させる必要があるということで今回改正されることになりました。
現在はまだ、民法改正の要綱仮案という素案の段階ですので、実際に国会で民法改正が可決される段階では、内容が修正される可能性がありますが、とても重要なテーマですので、ご紹介したいと思います。
①個人保証
個人が保証人となり多額の負債を肩代わりする危険性があるため、改正案では、極度額(限度額)の定めがない個人の根保証契約(様々な種類の債務を一括して保証する契約)は、全て無効とされています。
また、企業の金融機関からの借入に関わる改正としては、事業のための借入金について、個人が保証人となる場合、保証人が経営者(役員、主要株主、主たる債務者の配偶者、共同経営者など)である場合は、今までと同様ですが、経営者以外の第三者が保証人となる場合には、公正証書による保証意思の確認が義務付けられ、公正証書による確認がない場合は、保証契約の効力が生じないとされています。
②消滅時効
債権の消滅時効については、飲食店の代金が1年など債権の種類によって短期消滅時効がありますが、改正案では、これを廃止し、債権の種類を問わず一律の時効期間を定めることとされています。
現在、民事債権の時効は10年、商事債権の時効は5年とされていますが、これも統一し、改正案では客観的に権利を行使できる時(客観的起算点)から10年、債権者が権利を行使できることを知った時(主観的起算点)から5年とされています。
③法定利率
お金の貸し借り等をする場合に、利息や遅延損害金の利率を定めなかった場合、個人間では民事法定利率5%、会社間では商事法定利率6%となるのが現在のルールです。
改正案は、これを一律に3%と定め、かつ3年ごとに利率を1%単位で見直すこととし、いわゆる変動利率制が採用されています。
以上ご紹介した項目以外にも多数の改正点があり、この紙面ではとても全て記載することはできませんが、極めて重要な内容ですので、今後も民法改正の進捗や審議状況に合わせてご紹介できればと思います。
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