取引基本契約書
取引基本契約書~ちゃんとルールを定めていますか?【2012年7月号】
法律相談をお受けしていると、継続的に製品や商品の取引があるにもかかわらず契約書が作成されておらず、担当者ご自身にも詳しい契約内容が分からないケースが散見されます。
今回は、継続的な取引(売買を念頭におきます。)において作成すべき取引基本契約書についてご説明したいと思います。
1 取引基本契約書とは
一言でいえば、個々の売買契約(以下「個別契約」といいます。)に共通するルールを定める契約書のことです。もちろん個別契約を行う度に売買契約書を作成しても構いませんが、反復継続して取引が行われる場合には煩瑣です。そこで、価格や数量のように個別取引毎に変わりうる要素以外の要素を予め書面化しておくものです。
2 一般的に記載される条項
取引基本契約書に盛り込まれることの多い条項は、次のようなものです。
① 基本契約と個別契約の適用関係
個別契約で特に定めない限りは、基本契約の条項が個別契約に適用されるというルールを定める条項です。
② 個別契約の成立時期
個別契約がいつ成立するのかという点に関する条項です。買主が売主に注文書を送付したことを受け、売主が買主に承諾書を送付し、承諾書が買主に届いた時点で個別契約成立とするなどの例があります。売主が承諾するか否かを明らかにしなかった場合に契約成立とするのか不成立とするのかについても定めておきましょう。
③ 納品手続、検査手続の内容
買主はどこに、どのような方法で納品しなければならないのか、納品を受けた買主はどのような検査をしなければならないのかという点についての条項です。意味が多義的にならないよう、できるだけ具体的に定める必要があります。
④ 所有権移転
売買契約では取引の対象物の所有権が売主から買主に移転しますが、所有権がいつ移転するのかという点についての条項です。代金の支払いがあった時とする例や、検査が完了した時とする例などがあります。当事者の過失によらず対象物が滅失してしまった場合の取扱いについても定めておきましょう。
⑤ 代金の支払い
いつの時点で締め切って、買主がいつ、どのような方法で代金の支払いをするのかという点に関する条項です。
⑥ 期限の利益喪失
例えば、どのような場合に買主が⑤で定めた支払期限以前に代金を支払わなければならなくなるのかという点に関する条項です。期限の利益喪失条項に関する詳しいご説明は、ライトハウスニュース第51号(2011年5月号)「期限の利益喪失条項」*をご参照下さい。
⑥ 解約
継続的な取引は一定の期間取引が行われることを前提としますので、契約期間の途中で取引を終了させる必要が出てくるケースは当然考えられます。そのような場合に、どの程度の予告期間をおけば良いか、予め定めておくことは契約当事者双方にとって有益です。
3 問題がない時こそ契約書の整備を
取引が問題なく行われている間は、極論すれば契約書は必要ないかもしれません。しかし、問題が発生してから契約書を作成することは困難です。問題がないときこそ契約書の整備をご検討下さい。