期間満了による契約の終了はノーリスク?【2022年3月】弁護士池田篤紀

 

 契約には、「契約期間」が設定されることが多く、契約書にも、「契約期間満了の○ヵ月前までに当事者のいずれからも終了の意思表示がない場合、同内容で○年間自動更新する」旨の条項があると思います。このような自動更新条項が置かれている場合、契約書に定められた契約期間満了の一定期間前までに更新拒絶の意思表示をすれば、「原則」、契約書上は期間満了によって契約は終了となります。

 しかし、期間満了によって契約を終了する場合でも、リスクがないわけではありません。

⑴ フランチャイズ契約や売買契約等を繰り返し更新してきた場合

⑵ 賃貸借契約の場合

⑶ 期間の定めがある雇用契約の場合

には特に注意が必要です。今回は⑴の継続的取引での解消場面について、説明します。

 一つの契約であっても、継続的な取引を想定している場合、多額の初期投資を行うことがあります。しかし、このような初期投資を行ったにもかかわらず、突如、契約期間満了で更新されないとなった場合、初期投資すら回収することが困難になります。また、長期間、更新を繰り返していた場合、今後も、契約が更新されること期待して経営計画を立ててますが、更新されなかった場合には、経営計画がとん挫してしまいます。

 そのため、裁判例では、継続的な契約において、一方当事者が契約関係を終了する場合、法律上又は契約上、形式的に解消の要件を満たすとしても、それだけでは解消が認められず、「契約を終了させてもやむをえない事由」、「取引関係の継続を期待し難い重大な事由」が必要であると判断されている例が少なからず存在しています。裁判例は、①条項上は契約期間が短く限定されているにも関わらず、実際には契約が長期間継続することが予定されている内容か、②被解消者への事業の影響の度合い(初期投資の回収ができたかなど)、③解消の必要性(解消者の経営状況、被解消者の契約違反や信頼関係の破壊等はなかったか)、④更新されてきた回数など、総合的に判断しています。

 仮に、契約期間満了による解消を正当化できる事由が存在しないと判断された場合、契約の終了自体有効であっても、相当期間の逸失利益(契約が続いていれば得られたであろう利益)について損害賠償責任を負う場合があります。逆の立場では、損害賠償請求ができるチャンスがあります。

 前述のとおり、更新拒絶により、期間満了を迎え、契約が終了となるのが「原則」です。そのため、実際の裁判例においても、解消・更新拒絶を正当化できる事由が認められるケースの方が多く、上記のような請求が認められるケースはあくまで「例外」のように思います。しかし、一番重要なのは、上述のとおり、契約期間満了による終了の場合でも、ノーリスクではないこと、終了された場合でも、ノーチャンスではないということです。