所有者不明土地の解消に向けた法改正等について(その3)【2023年4月号】弁護士今井千尋

 

 所有者不明土地問題への対策として行われた令和3年4月の法改正等のうち、前々回(第170号)は不動産登記法の改正に関する事項を、前回(第177号)は相続土地国庫帰属制度を、それぞれ取り上げました。今回は、その3として、土地利用に関係する民法の改正のうち主なもの(ただし、第183号で亀村弁護士が取り上げた竹木の切取りについては割愛します)についてご紹介いたします。

 

1 隣地等の利用・管理について

 土地の所有者に、①障壁、建物その他の工作物の築造、収去、修繕、②境界標の調査、境界に関する測量、③越境した枝の切取り、を目的として隣地を使用する権利が認められました。

 また、一定の要件のもとで、土地の所有者に、ライフラインの設備を設置するために隣地を使用することや他人が所有するライフラインの設備を使用することが認められるようになりました。

これらは「使用請求権」ではなく「使用権」であり、権利を実現するために民事訴訟を提起する必要はないとされております。

 

2 共有物の管理・変更等について

 共有物を使用する共有者がいる場合であっても、各共有者の持分価格の過半数で共有物の管理に関する事項を決定することができることが明記されました。また、共有物を使用する共有者は、別段の合意がない限り、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を支払う義務を負うとされました。

 次に、各共有者の持分価格の過半数で共有物の管理者を選任することができ、共有物の管理者は単独で管理を行うことができることが明記されました。また、共有者の一部が、①所在等不明であったり、②管理に関する事項について賛否を明らかにしない場合、裁判所が他の共有者の持分価格の過半数で共有物の「管理」に関する事項を決定できる旨の裁判をすることができる制度が設けられました。これに対し、共有物の「変更」の場合は、①の場合のみ同様の制度が設けられました。

さらに、不動産の共有者の所在等が不明な場合、裁判によって他の共有者に持分を取得させたり持分譲渡権限を付与する制度が創設されております。

 

3 所有者不明土地等の管理について

 人単位(例えば、「Aさんの所有する財産」)で所有者に代わって財産を管理するという、従前からあった不在者財産管理制度と異なり、特定の土地(所有者不明土地・管理不全土地)や建物(所有者不明建物・管理不全建物)を裁判所が選任した管理人が管理する制度が設けられました。

 

4 遺産分割の期間制限について

 相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割については、特別受益(ある相続人が被相続人から生前贈与を受けたこと等)及び寄与分(ある相続人が被相続人の療養看護を担ったこと等)に関する規定が適用されないものとされ、法定相続分によるものとされました。