契約不適合Q&A【2021年6月】弁護士今井千尋

 日頃、継続的取引(例えば、商品を継続的に売買する契約)に関する取引基本契約書を拝見していると、契約不適合に関する理解が混乱しているため、この点に関する条項が自社の案であるにもかかわらず自社に不利になっていることがあります。そこで、今回は、会社間の継続的商品売買契約を念頭に、契約不適合に関する情報及びポイントをQ&A方式で整理してみたいと思います。

 

1 契約不適合とは何ですか。

A1 目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことをいいます(民法562条1項)。民法改正により、数量不足も契約不適合に含まれるという整理になりました。

 

2 契約書で契約不適合に関する条項を定めなければ、どうなるのですか。

A2 民法や商法の規定が適用されます。具体的には、次のとおりとなります。

(1)買主は、その選択により、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができます。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が選択した方法と異なる方法による履行の追完をすることができます(民法562条1項)。

(2)買主が履行の追完の催告をしたにもかかわらず履行の追完がないなど一定の場合、買主は代金の減額を請求することができます(民法563条1項、2項)。(3)買主は、損害賠償請求や契約の解除もすることができます(民法564条)。

(4)会社間の売買の場合、買主は、目的物を受領したときは遅滞なくその物を検査しなければならず(商法526条1項)、当該検査により契約不適合を発見したときは直ちに売主に通知しなければ(1)~(3)を行うことができません。目的物の受領から6か月が経過した場合も(1)~(3)を行うことができません(同条2項)。

 

3 買主の立場で契約不適合に関する条項を定める場合、どのような条項とすることが考えられますか。

A3 ①履行の追完方法につき、買主に選択権を与え、その例外を認めない条項、②履行の追完の催告を要せず買主が代金の減額を請求できるとする条項、③目的物を受領した際の検査を不要とし、通知がなくても受領時から一定期間は契約不適合責任を追及することができるとする条項、④契約不適合責任を追及することができる期間を6か月より長くする条項、といったものが考えられます。

 

4 売主の立場で契約不適合に関する条項を定める場合、どのような条項が考えられますか。

A4 ①履行の追完方法を限定する条項、②履行の追完方法につき、売主に選択権を与える条項、③契約不適合責任を追及することができる期間を6か月より短くする条項、といったものが考えられます。