緊急時の株主総会の開催方法について【2020年5月号】弁護士池田篤紀

 

6月に株主総会を予定している会社は多いと思いますが、長期化する新型コロナウイルスの影響で、開催方法等に頭を悩まされている方も多いかと思います。

 

1 株主総会の開催を中止・延期できるか

(1)中止することはできる?

株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集することが義務付けられているため(会社法296条1項)、これを開催せずに済ますことはできません。

(2)延期することはできる?

それでは延期することはできるでしょうか。定期株主総会は定款で開催時期を定めている会社が多いかと思いますが、経済産業省は、「天災等その他の事情によりその時期に定時株主総会を開催できない場合には、当該状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りる」、すなわち、「株主総会を延期することは可能」との見解を示しています。しかし、いつまでなら合理的な期間内と評価されるのか明示していません。また、株主の議決権行使には基準日がある以上、開催延期が長期化する場合には、新たに議決権行使の基準日を定めるなどの別の手間がかかります。そしてなにより、経営に参画しない株主は、新型コロナウイルスが事業に与えた影響等を早急かつ具体的にに知りたいと考えています。そのため、株主総会の開催を長期間延期することは事実上難しいでしょう。

 

2 株主総会の開催方法を工夫する

 「三密」を避けながら、株主総会を開催する方法としてどのような工夫をしたらいいでしょうか。

(1)書面等を利用した決議

まず、実際に株主総会へ出席する株主の人数を減らすために、「書面」又は「電磁的な方法」によって議決権行使を認める方法があります(会社法298条、299条)。仮に、総会の目的である事項について議決権を行使することができる「株主の全員」が、これら方法により「同意」の意思表示を示した場合には、株主総会の決議とみなされるため、開催そのものが不要になります(会社法319条1項)。

(2)開催する場合の最低限の措置

開催を不要とする上記例外的な場合を除き、株主総会招集通知で事前に株主にもマスク着用の協力を依頼する、消毒液の使用、間隔を開けた座席配置にするなどの一般的な措置は取らなければならないでしょう。加えて、株主総会が長時間とならないよう心がける必要もあるでしょう。

 

3 想定問答の準備を行う

前述のとおり、株主としては、新型コロナウイルスが事業に影響したか、今後の見込み等非常に関心があります。そのため、株主への説明義務を果たすという点でも、株主総会を長時間化させない点においても、新型コロナウイルス関連の想定される質問に対する回答については事前に検討しておくことが重要になります。