秘密保持契約書(NDA)について(池田篤紀弁護士)
秘密保持契約書(NDA)について 【2019年2月号】 弁護士 池 田 篤 紀
1 秘密保持契約とは?
秘密保持契約とは、契約当事者に秘密保持義務(守秘義務ともいいます。)を課す契約のことをいい、英語表記は、「Non-Disclosure Agreement」とされています。これを省略して「NDA」と呼ばれることもあります。
2 背景
最近、この「秘密保持契約」に関する依頼が増えています。この秘密保持契約が重視されることになった背景には、近年の情報技術(IT)、SNSの発達などにより、従来では考えられなかったような方法により、企業の内部情報が漏洩することが珍しくなくなってきたことが原因であると考えられます。
3 秘密保持契約を締結する場面と目的
(1)自社の機密情報を開示する場面・自社の機密情報を守る目的
会社内で限られた従業員のみで保持したい機密情報を、取引の必要から他社の人間に情報を開示せざるを得ない場面が必ずあります。例えば、自社が開発している新商品の大量生産を工場に依頼するにあたって工場に設計図やその他詳細な情報を提示する場面です。そのような場合には、「自社の大事な企業情報を守るため」に、取引先との間で秘密保持契約を締結します。
(2)従業員と締結する場面・自社の機密情報を守る目的
企業の機密情報は、外部から漏れるだけではなく、内部からも漏れる可能性はあります。そのため、取引先だけではなく、社員に対しては入社時や退社時には「秘密をもらしません!」という趣旨の誓約書を提出させることもあります。これも一種の秘密保持契約にあたります。これにより、従業員自身の情報管理意識が高まり、情報漏洩リスクは減少することになります。
(3)機密情報を受領する場面・取引先の機密情報を守る目的
一方で、自社が取引相手の機密情報を受領し管理する場面もあります。こういった場面でも、取引先の依頼に応じて、秘密保持契約を締結することがあります。この場合には、秘密保持義務を負う立場として、「秘密情報の管理」が非常に重要になります。秘密情報の管理が適切に行うことができれば、取引先からの信用性が増すことになるでしょう。
4 秘密保持義務を怠った場合
秘密保持契約に反して、秘密情報を漏洩して(されて)しまった場合には、企業秘密が外部に流出することになるので、多額の損害賠償請求をする(される)場合があります。また、当然、取引先との契約を解消する場合もあります。そのため、前述のとおり、秘密保持契約を締結するだけではなく、相互の「秘密情報を適切に管理する」ことが重要です。