取引には契約書を(1)【2004年1月号】

 

弁護士 榎 本   修

  取引の際に一々契約書を作ることは面倒なものです。しかし、「どんな簡単な取引でも、契約書を作りましょう」というのが、今回のお話です。

Q.契約書なんかなくても、相手との長年の信頼関係があるから大丈夫?
 取引上の信頼関係は何よりも大切なものです。信頼関係がある限りは契約書など要りません。しかし、契約書が本当に威力を発揮するのは、関係が壊れた時です。関係が壊れてからでは、契約書などとても作れません。信頼関係があるうちにこそ作るべきなのです。

Q.契約書がなくても、商法や民法などの色んな法律で決まっているのでは?
 確かに民法や商法、その他の法律で様々なことは決まっていますが、当事者間に契約書がある場合、そのような民法・商法の規定よりも、契約書の規定が優先されるのが原則です。その意味で、契約書は契約当事者の間では「憲法」のような重要な存在なのです。法律相談で、まず、「契約書はありますか?」とお尋ねするのは、民法や商法にどんなに有利な条文があっても、契約書に別のことが書いてあれば、契約書が優先することが多いからです。そういった意味でも契約書はとても重要なのです。

 このニュースレターでは、次回以降、具体的な契約書の作り方や、契約書作成のための弁護士の上手な利用法について書かせていただく予定です。当事務所と顧問契約を締結していただいている顧問法人は、契約書作成や契約書のチェックについては、顧問契約の範囲内に含まれており、無料とさせていただいています。