日本版LLC・LLPについて【2005年11月号】

 

弁護士 安 田   剛

 来年から施行される新しい会社法では「合同会社」(日本版LLC)という新しい会社形態が創設されることになりました。また、既に今年の8月から、「有限責任事業組合」(日本版LLP)という新しい組合の制度も創設されています。
 LLCは、米国でIBMやインテル等の共同研究開発や投資会社、IT産業などで活用されており、LLPは英国で会計事務所やソフト会社などで活用されています。日本でも、LLC・LLPが、ベンチャーや中小企業と大企業の連携、中小企業同士、事業者や専門人材などの連携による新規共同事業に活用されることが期待されています。
 LLCやLLPは、①有限責任制(出資者は出資額までしか責任を負わないこと)、②内部自治原則(出資額の比率に関係なく、利益配分や権限分配を決めることができ、また株式会社のように取締役会や監査役などを設置する必要がないこと)といった特徴があります。
 従前から存在する株式会社や合名会社・合資会社、民法上の組合などの制度では、これらを全て兼ね備えたものは存在しなかったため、今回の新しい制度を創設することになったわけです。
 ただ、LLCやLLPで最も注目されている特徴は、③構成員課税です。これは、LLC・LLP自体には課税されずに、出資者に直接課税される(LLC・LLPに法人税が課され、出資者への利益配分にも課税される「二重課税」が回避される)というものです。例えば、出資者は本来の事業による収入と、新たに出資したLLPの損失とを損益通算して節税となる場合もあり得ます。
 もっとも、LLPについて③構成員課税は認められているものの、現在のところ、LLC(合同会社)について税務当局は③構成員課税に否定的であり、導入されるか否かは不透明です。