契約書の作り方

契約書の作り方 【2007年3月号】

弁護士 榎 本   修

 
  最近、顧問先の皆様からは「契約書を作ってください」というご相談が増えてきました。

  * 契約書を作ることはとても良いことです
  「取引基本契約書」「個人情報保護に関する契約書」「守秘義務に関する契約書」など様々なご依頼があります。このことは大変良いことです。昔は「契約書なんて作ってないよ」「相手との信頼関係でやってきたんだから、請求書と領収書だけで十分」ということも多くあったと思うのですが、これだけ取引が複雑になり、また多数の方が関わるようになると思わぬトラブルがあるものです。また、世の中全般に「コンプライアンス(法令遵守)」が叫ばれるようになりました。これまで何でも官庁が『事前に』調整してくれていた社会は、「契約書をきちんと作ったものだけが『事後的に』救済される」という社会に変わりつつあります(『事前調整』から『事後救済』へ)。そこでいう「事後的」な救済とは、基本的には契約書などに基づいた訴訟(裁判手続)が想定されています。契約書は保険のようなものであり、万が一の時にこそ意味があります。相手との関係が円満だからこそ作っておく必要があるわけです。

  * 契約書を作るうえでのチェック・ポイント
 当事務所の顧問先の皆様は「契約書を作ろう」という意識が高いお客様が多いです。そこで、今回は、更に一歩進めて「どうやったら良い契約書ができるか?」ということを一緒に考えてみましょう。

  ① 契約書は「パック商品」ではありません。
  契約書はスーパーで売っているような「パック商品」とはちょっと違います。どのような相手なのか(相手が会社なのか個人なのかによっても内容は変わっています)、どのような取引内容なのか等々によって、作るべき「良い契約書」は千差万別です。「既製服(レディメード)」ではなく、「注文服(オーダーメード)」のイメージです。

  たまに「他の会社で使っているやつをちょっと送っといてください」というご依頼がありますが、当事務所としては取引の相手方や内容についてよく確認しないで全くそぐわない条項の契約書をお送りするわけにはいきません。結局は、ご迷惑がかかるからです。ですから、契約書を作成したい場合には、次の点については是非教えてください。

ア)相手の正式な名称(個人or法人)と
  住所
  ※当事務所では相手が法人の場合、必ず登記簿謄本を取り寄せて確認しています。
イ)取引の期間(1年なのか3年なのか)
ウ)取引の内容・金額
  ※内容は、ポイントだけでも構いません。

  ② 契約書は不断のバージョン・アップ (改訂)が必要不可欠です。
  取引は継続的なものですから、内容が変わってゆくこともあります。また、最初から完璧な契約書を作るのは難しいところもあります。取引を有る程度続けてみて契約書の条項に盛り込むべきことや表現の修正が必要であることを発見することもあります。その意味で、契約書は常に(何度も何度も)バージョン・アップ(改訂)して「強い」契約書にしてゆくことが必要不可欠です。

  当事務所では通常の契約書である限り(よほど複雑な契約書でない限り)顧問料の範囲内で何度でも契約書の改訂の御相談に応じさせていただいております。こんな時こそ、顧問弁護士事務所があるメリットをフルに活かしていただき、お気軽にご相談下さいますよう御願い申し上げます。