最近の最高裁判例より

最近の最高裁判例より 【2011年3月号】

弁護士  榎   本       修


~せっかく遺言したのに先に子どもが亡くなってしまったら?

 一部新聞などで最高裁判所の平成23年2月22日の判決が大きく報道されました。

 このケースは、子どもが二人いる(長男と長女)おばあさんが、「財産を長男に相続させる」という遺言を作ったのに、先に子ども(長男)が亡くなってしまったケースです。財産は長男の子(孫)に100%いくのか、長女(つまり、孫から言えばおばさん)と孫の50%ずつの共有になるのか、という点が争われました。

 最高裁は、50%ずつ共有になるのが原則だと判決しました。つまり、先に子どもが亡くなった場合には、原則として遺言はその部分が無効になると判決したのです。

 法律上、遺言は何度でも書き直すことができ、一番最後に作ったもの、死亡時期に一番近い時期に作成されたものが有効になります(民法1023条)。本当に孫(長男の子)にあげたいのなら、長男死亡の段階で「では、孫にあげる」という遺言を作り直しておくべきだったのですね。

 遺言は、自分の財産内容や家族状況の変化などによって、内容を見直す必要が生じます。せっかく作った遺言を書き直すのは面倒ですが、残された人への愛情を示すためにも、家族構成が変わったり、財産の増減があったとき(例えば、不動産の売買をしたとき)は、都度きちんと書き直しておくことが重要です。