御社の株主名簿はどこにありますか?【2021年11月】弁護士榎本修

 

 ご相談の際、弁護士から「御社の株主名簿をくださいますか?」とお願いすることは多いです。株主の相続・会社の経営権の所在を確認するため「株主が誰か」を確定することは相談のスタートとして非常に大切です。

 

「ありますよ。法人税の申告書についている『あれ』ですよね」

 よくあるパターンは決算書・申告書を見て、「ああ、ここにあります」と法人税申告書の別表二「同族会社等の判定に関する明細書」を持って来られる事例です。

 しかし、この「別表二」は、タイトルの通り「税務署が『同族会社』と判定するか否か判断するための明細」で「株主名簿」ではありません。

会社法121条は、全ての株式会社(例外はありません)が株主の氏名(名称)・住所株式株式取得日等を記載した株主名簿を会社が作成せよと規定し、作成しないと100万円以下の過料に処せられることもあり得ます(会社法976条7号)。

 

「うちの会社のパソコンにエクセルで作った表があります」

 会社法は「電磁的記録」(26条2項)での作成も認めていますが、電子データは簡単に書き換えられてしまいます。よくあるのは「エクセルファイルがたくさんあってどれが本当のものか分かりません」というトラブルです。以上から、株主名簿は紙で作成することを強くお勧めしています。

 

「ああ、この間、司法書士さんが作ってくれた『あれ』でいいですよね」

 平成28(2016)年10月1日以降に会社の登記をするときは、法務局から株主リストを要求されることがあります。この「リスト」は株主名簿とかなり近いのですが、議決権数上位10名、議決権割合が2/3に達するまでのいずれか少ない方の株主のリストだけで良いとされており、全株主について氏名や住所、持株数や取得日を記載しなければならないという「株主名簿」とは厳密には別の書類です。

 

 以上の通り、「株主名簿」を作ることは全ての株式会社の義務なのですが、きちんと作ることは結構面倒であり、しかもそれを印刷して保管するとなると、なかなか励行されていないのではないかと思います。株主名簿をきちんと作成することは、会社を安定して運営していくためにもとても重要で大切なことです。ぜひ、折りに触れて確認されることをお勧めします。