カスハラをご存じですか【2020年11月号】弁護士亀村恭平
1 はじめに
これまでにも関連する記事を何度か記載してきましたが、私が取り扱っている業務として「民事介入暴力対策」があります。典型例としては文字通り暴力団対策をするものですが、暴力団相手ではない一般的な不当要求対策もしています。
今回は、不当要求の中でも、カスタマーハラスメント(通称カスハラ)についてご紹介します。
2 カスハラって何?
カスタマーハラスメントとは、カスタマー(消費者、顧客)による、企業(特に店員)に対するいやがらせです。カスハラにおいては、一般の消費者が不当要求の加害者となる点に特徴があります。
3 どのような事例があるのか?
カスハラには様々な類型がありますが、UAゼンセンという労働組合が行ったアンケートによれば、以下のような事例が報告されています。
・3年前に購入した商品の交換を求められた。
・ポイントカードをお持ちですかと聞いたら怒鳴られ、商品を置いて帰っていった。
・値引きに関して、顧客の買いたい金額にできなかったため暴言を吐かれた。
・お客様は神様なんでしょ、要望を叶えなさいよと長時間言われ続けた。
4 企業がとれるカスハラ対策は?
暴力団による不当要求の場合、不当要求であることが明らかな場合が多く、会社全体での対応をすることが期待できます。また、恐喝、強要等の刑法犯に該当するとして警察が対応することも期待できます。これに対し、カスハラの場合にはできる限り穏便に済ませたいという要請があるため対応が難しく、暴力団による不当要求と比べて警察による対応も期待しにくいという問題があります。
しかし、カスハラであっても基本的な対応における注意点は通常の不当要求と異なることはありません。カスハラの場合、顧客対店員という構造になり、個別の店員に対応を任せることになりがちですが、不当要求と考えた場合には店員を孤立させるのではなく、複数での対応、組織としての対応が必要となります。また、確実にそのような対応をするためには、あらかじめ対応マニュアルを作成しておくほか、不当要求に対する研修を受ける、不当要求対応の責任者を定めるといった対策も必要となります。
さらに、カスハラでは暴力団による不当要求と比較して警察による対応が期待しにくいと書きましたが、顧客が店員に土下座をさせたとして強要罪で逮捕されたという例もあります。全く警察が対応してくれないというわけではありませんので、いざというときには警察への通報をしていいと認識していただくだけでも、対応する際に余裕ができます。
5 最後に
具体例として紹介した中にも「お客様は神様」という発言がありましたが、三波春夫オフィシャルサイトによれば真意と違う意味に使われているようです。また、仮に元は神様であったとしても不当要求をしている時点で神様ではありませんので、不当要求者として毅然とした対応をとることをお勧めします。
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