民事訴訟手続のデジタル化【2026年1月号】弁護士安田剛
2022年12月号でも「民事裁判のIT化について」というタイトルでご紹介した民事訴訟手続の電子化に向けた法改正ですが、いよいよ本年(2026年)5月21日から全面的に施行開始となることが決まりました。そこで、改めて、どのようなことが始まるのか、ご紹介してゆきたいと思います。
①民事訴訟のオンライン申立て
民事の裁判を起こす場合に、裁判所の「mints」(ミンツ)という専用のシステムを使用して、オンラインで訴えを起こすことができるようになります。これまでは紙で「訴状」を作成し、記名押印して、裁判所に郵送等で提出する必要がありましたが、「訴状」をPDFにして、オンラインにより「mints」にアップロードすることで、訴訟提起できるようになります。
また、弁護士等が代理人となっている場合には、本年5月21日からオンライン申立てが「義務化」されます。すなわち、同日以降は、紙で訴状を提出しても受け付けてもらえない、ということになります。なお、繰り返しになりますが、オンライン申立てが義務化されるのは、弁護士等が代理人となっている場合のみで、代理人がおらず本人が訴訟提起する場合には、紙での訴訟提起も引き続き認められることになっています。
②電子納付
訴状をオンラインで申し立てることになることに伴い、訴え提起のための手数料も電子納付で納付する必要があります。現在は、訴状に手数料分の収入印紙を貼付して裁判所に提出し、訴状や準備書面等の裁判書類の郵送の為の費用を、郵便切手等で納めるというやり方でしたが、今後は、訴え提起の手数料に一本化され、かつ電子納付することになります。
③インターネットによる訴状等の送達
訴え提起があると、訴状等の書類を被告となる相手方に「送達」する必要があります。現在は、特別送達という方法で郵送されていますが、今後は、オンラインで送達を受ける旨の届出をした後、「mints」のシステム上にアップロードされると、その旨が電子メール等で通知されるため、その通知を見て、「mints」のシステムにアクセスし、書類ファイルをダウンロード等した時、あるいはメール等の通知があった時から1週間経過した時に、「送達」が完了することになります。
もっとも、最初の訴訟提起時には、被告となる相手方から、オンライン上で書類を受け取る旨の届出が提出されていないことも多いと思われます。そのような場合には、原告がオンライン上でアップロードした訴状等のファイルを紙に印刷して裁判所に提出する必要があり、裁判所がこの紙媒体の訴状を被告に特別送達で送付する、というアナログなやり方が残ることになります。
④証拠調べ
契約書などの裁判の証拠も、PDF等にして裁判所のシステムにアップロードして提出することになり、写真や動画などはファイルの状態でアップロードして提出することになります。
また証人尋問も一定の要件の下で、ですが、ウェブ会議の方法により裁判所に出頭せずに実施することも可能となります。
⑤裁判記録の閲覧・複写(ダウンロード)
このように裁判の記録が電子化された状態となることに伴い、記録の閲覧もオンラインで行うことになり、記録のコピーを入手する場合(現在は謄写すると言っていますが)も、電磁的記録でダウンロードする等の方法によることになります。
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