空家特措法の改正について【2023年11月号】弁護士今井千尋

 

 令和5年6月に空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空家特措法」といいます。)が改正されました。平成26年の空家特措法成立から9年が経ち、空き家問題の社会的認知度は飛躍的に向上しましたが、今年大きな改正があったことはご存じない方も多いと思います。そこで、今回は、空家特措法の令和5年改正のうち、空き家の所有者等に直接関係する部分についてご紹介いたします。

1 改正前から変わらない内容(改正内容の理解に必要な範囲でご紹介します。詳しくは第116号をご参照下さい。)

(1) 空家等の所有者等の責務

 空家等(建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地)の所有者等は、空家等の適切な管理に努めるとされています。

(2)特定空家等

 「特定空家等」とは、次のいずれかの状態にある空家等をいいます。

放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態(実務的にはこのケースが多くを占めています)

放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態

適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

(3)特定空家等に対する措置

 特定空家等の所有者等は、市町村長から除却、修繕、立木竹の伐採その他の措置をとるよう助言又は指導を受けることがあります。そして、助言や指導を受けても改善されないときは勧告を受けることがあり、勧告に従わない場合は命令を受けることがあります。命令に従わない場合などには、市町村が所有者等に代わって措置を行うこと(代執行)もあります。勧告がなされた場合、住宅用地特例が解除され、固定資産税が増額となります。

 改正内容

(1)空家等の所有者等の責務

 空家等の所有者等に対し、国又は地方公共団体が実施する施策に協力する努力義務が追加されました。

(2)適切な管理が行われていない空家等に対する措置

 放置すれば特定空家等になるおそれのある空家等の所有者等は、市町村長から特定空家等になることを防止するために必要な措置をとるよう指導を受けることがあります。指導を受けてもなお状態が改善されず、放置すれば特定空家等になるおそれが大きい場合は勧告を受けることがあります。勧告がなされた場合、特定空家等と同様に住宅用地特例が解除され、固定資産税が増額となります。

 これは、命令以上の措置こそ認められていませんが、特定空家等になる一歩手前にある空家等が特定空家等になることを未然に防止するための改正と言えます。

(3)代執行の円滑化

 非常時であって命令等を経るいとまがない場合に緊急に代執行を行う制度が設けられました。

 今回の改正内容で最も重要であると思われるのは2(2)であると思います。特定空家等に該当しなくても積極的な措置を行うことが求められますので、空き家をお持ちの方はご注意下さい。