刑事事件について

刑事事件について【2006年9月号】

弁護士 榎 本   修

 
 
  当事務所では、皆様からのご相談に応じて様々な事件・案件を取り扱っています。その多くは、民事事件(例えば貸金の回収であったり、不動産の明渡であったり)なのです。非常に稀ですが不幸なことに身内や知り合いの方に刑事事件が起こってしまい、当事務所にご依頼がある場合があります。
  今回のニュースレターでは、このような刑事事件についてお話ししましょう。テレビのニュースや新聞記事が、ちょっと違って見えてくるかもしれません。
 
(1)警察はいつ来るか?

  例外はありますが、多くの事件では警察は早朝やってきます。何故なのでしょうか?前の夜から張り込みをしているのでしょうか(それなら前の夜にタイホしてしまえば良さそうなものですが)。でも、よく考えると民事事件の強制執行でも差押えには朝一番(7時とか)が割と多いです。「寝込みを襲え!」ではなく「夢うつつのところを襲え!」ということなのでしょうか。

(2)タイホされると何日帰ってこれないか?

  大体は逮捕というものは突然やってきます。家族に「お父さんは遠いところにおつとめに行ったんだよ」と説明するにしても、「いつ帰ってくるの?」と聞かれてしまいます。どう答えたら良いのでしょうか。
  すぐ帰ってくる場合もあるのですが、逮捕後3日以内に「勾留(こうりゅう)」という手続に入るとまず10日間警察に「ご宿泊」することになります。勾留延長といって、もう一回延長される場合もあります。つまり逮捕の3日+最初の勾留10日+勾留延長10日のあわせて23日も「宿泊」することになるわけです。会社には「何で休んでるのか」と聞かれてしまうでしょう。そこで「一刻も早く出たい」という気持ちになります。時々、ウソの自白をして「私がやったことでいいです」と供述してしまい、後に「本当はやってないんです!」と裁判で主張して無罪判決が出る例があります。何でそんなウソの自白をするのか?と思われるかもしれませんが、23日も警察にいなければならないというのは相当辛いことのようで、そのあたりを理解してあげなければいけないと思います。

(3)書類送検とは?

  よくテレビで「書類送検されました」と言っています。あれは何なのでしょうか。
  警察は捜査を終えると事件を「検察庁」に送ります(送検)。警察は都道府県の役所ですが(愛知県警)、検察は国の役所です(法務省)。検察官が最終的に、正式な裁判にするのか(起訴・公判請求)、しないのか(不起訴)ということを決める権限を持っています。「書類送検」とは、(逮捕・勾留されず)書類だけが検察庁へ送られることをいいます。
  不起訴には、「この人は本当は無罪だから起訴できない」という不起訴(嫌疑不十分で裁判すると無罪判決が出る危険性がある場合も含みます。)と、「本当はやっているんだけど、今回は逮捕されて警察にも何日も泊められて反省しているみたいだし、被害者にきちんと被害弁償もしたんだから今回だけは裁判にしないで勘弁してあげるよ」という「起訴猶予」というものがあります。
 
  他にも「保釈金の額はどうやって決まるのか?」といったお話もあるのですが、これはまたの機会にさせていただきましょう。
  今回のお話は、「役立たない」ことをお祈りしています。