特殊詐欺の被害回復方法
1 はじめに
令和7年の特殊詐欺の被害額合計は1414億1743万3027円と過去最悪を記録しています。令和6年の718億7727万5370円、令和5年の452億5643万6710円という額と比較すると、爆発的に増えていることが理解していただけるかと思います。
また、特殊詐欺の統計にはSNS型投資・ロマンス詐欺が含まれていませんが、令和7年はSNS型投資・ロマンス詐欺の被害額も1827億円と高額となっています。
そこで、今回はA銀行のX名義の口座に振り込むよう指示され、詐欺被害にあったケースを想定して、被害回復の方法についてご紹介したいと思います。
2 警察への被害申告等
警察に被害申告をすることで、金融機関に対しても情報提供がされ、送金先口座の口座凍結につながります。また、捜査の結果犯人が逮捕されれば、被害弁償として被害回復に繋がる可能性もありますので、まずは警察への被害申告をすることになります。なお、被害者からの申告に基づき口座凍結する金融機関もありますので、金融機関に対しても被害申告をするとより適切です。
3 振り込め詐欺救済法
振り込め詐欺等の被害者に対する被害回復分配金の支払手続等を定める法律として、「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(通称振り込め詐欺救済法)」があります。
振り込め詐欺救済法では、金融機関が振り込め詐欺等により資金が振り込まれた口座(本件の場合A銀行X名義の口座)を凍結し、預金保険機構のホームページで口座名義人の権利を消滅させる公告手続を行った後、被害者から支払申請を受け付け、被害回復分配金を支払うことなどが定められています。
ただし、既に対象口座に係る債権に対して強制執行等がなされている場合など、公告や被害回復分配金の支払いがされない場合もありますので、強制執行等が必要となる場合がある点に注意が必要です。
4 仮差押えと訴訟提起
法的手続を検討する場合、口座名義人の住所氏名の特定が必要ですが、本件ではA銀行のX名義という情報しかありません。そこで、金融機関への照会により回答を得る必要があります。
特定ができた場合、本件の振込先であるA銀行X名義の口座について仮差押、訴訟提起、強制執行という手順を踏むことで、被害回復を図る方法があります。ただし、複数の被害者が同様の手続きをしている場合は残高を被害金額で按分した配当しか受けられませんので、費用倒れになる可能性があるというリスクもあります。
また、裁判所に自らが債権者であるという虚偽の申告をして、強制執行により凍結口座から約5000万円引き出したという、法制度を悪用した事件も発生しています。
5 おわりに
今回は特殊詐欺の被害回復について簡単にご紹介しましたが、詐欺利用口座であり残高が残っていない、他の被害者、虚偽の被害者との競争になるなど、被害回復は容易ではありません。
不審な振り込みを行わないことが最大の防御策ですので、冒頭ご紹介したように詐欺被害が増加していることを認識するとともに、この機会に周知していただければと思います。
