最近の特殊詐欺事情【2024年6月号】弁護士亀村恭平

 

1 はじめに

 特殊詐欺の代表例といえばオレオレ詐欺というイメージが強いかと思いますが、オレオレ詐欺という言葉が最初に使われたのは2003年と言われており、時代の変化とともに詐欺の手口も変化していますので、今回は近年増えている詐欺についてご紹介します。

2 投資詐欺

 最近の投資詐欺事案として、有名人を騙るという特徴があります。報道によると、池上彰氏、森永卓郎氏、前澤友作氏などを騙る手口があるようです。

 これまで、オレオレ詐欺の対策として、本当に本人からの電話か確認しましょうという説明がなされることもありましたが、有名人を騙るケースの場合本人に直接確認するのが難しいという問題があります。また、本人の声に似せてAIが生成した音声を利用することで、本当に本人が対応していると誤認させるという手法もありますので注意が必要です。

3 国際ロマンス詐欺

 外国人や外国在住の日本人として恋愛感情や親近感を抱かせて金銭をだまし取る手法です。

 この手法の特徴としても、本人確認するという基本的な対策が通用しない点が挙げられます。「国際」となっているのがポイントであり、これが日本国内であれば直接会って話すことや、振込ではなく直接金銭を渡すという選択が生まれるのに対し、国際ロマンス詐欺であることにより、直接会うことは諦めざるを得ず、現金の支払方法が振込であることもやむを得ないという理由が出来てしまいます。

 また、相手の素性についても名前と写真程度でしか判断できませんので、適当な名前をつけて実在する全く無関係な美男美女の写真を利用すれば、同一人物が男性も女性も騙すことが出来るという特徴もあります。ただし、そのような手法であるために、同一の名前での検索や、インターネット上に同一の画像が存在しないかを調査することで、詐欺を見破るヒントになることも考えられます。

4 警察を騙る詐欺

 従来型の劇場型詐欺でも警察官を名乗る人物が登場することはありましたが、近年問題となっているのは警察署からの電話であることを偽装する詐欺です。

 警察署の電話番号は、末尾が0110という特徴的なものとなっていますので、全く違う番号からかかってきたにもかかわらず警察署を名乗る場合は疑うことができます。これに対し、実際に電話をかけているのが警察署からではないにも関わらず、被害者の電話には実在する警察署の電話番号が表示されるという手法により警察だと信じてしまったという事例があります。改めて警察署の電話番号を調べてかけなおすことで確認は可能ですが、この機会にそのような手口があることを知っていただければと思います。

5 最後に

 詐欺の対策と新たな手口はいたちごっこの状態です。一度支払ってしまうと取り戻すことは難しく、そもそも加害者が特定できないことも多いため、弁護士や身近の信頼できる人に相談するなど、支払う前に踏みとどまることを意識していただけるとよいかと思います。