所有者不明土地の解消に向けた法改正等について(その2)【2022年9月号】弁護士今井千尋

 

 所有者不明土地問題への対策として行われた昨年4月の法改正等のうち、前回(第170号)は不動産登記法の改正に関する事項を取り上げました。今回は、その2として、新法(相続土地国庫帰属法)の制定により創設された相続土地国庫帰属制度についてご紹介いたします。

 

1 制度の概要

 相続土地国庫帰属制度とは、相続又は遺贈によって取得した土地所有権を、取得者の承認申請及び法務大臣による審査・承認を経て国庫に帰属させることを可能とする制度です。

 

2 承認申請の申請権者

 法務大臣に対する承認申請をすることができる者は、相続又は遺贈によって土地所有権を取得した者です。したがって、例えば、売買で土地所有権を取得した者は、承認申請をすることができません。また、遺贈を受けた者であっても、相続人以外の者は、承認申請をすることができません。なお、共有地の場合は、共有者全員で承認申請を行う必要があります。

 

3 国庫帰属の対象とならない土地

 上記2の要件を満たす場合であっても、管理コストの国への不当な転嫁を防止するため、一定の要件に該当する土地は、国庫帰属の対象から除外されています。

 

 具体的には、次のような土地は承認申請ができないとされています。

 

●建物が存在する土地

●担保権や使用収益権が設定されている土地

●他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地

●有害物質により汚染されている土地

●所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

 

 また、次のような土地は、法務大臣の承認を受けることができないとされています。

 

○崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの

○土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地

○除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存在する土地

○隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの

○上記のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

 

4 負担金の納付

 法務大臣の承認があったとき、承認申請をした者は、10年分の土地管理費に相当する額の負担金を納付することになります。この負担金の納付がなされれば、申請にかかる土地が国庫に帰属することになります。