特定デジタルプラットフォーム透明化法 【2025年9月号】弁護士坂典子

1 デジタルプラットフォームとは?

 「プラットフォーム」は「基盤・土台」という意味ですが、ビジネスの世界では、利用者と事業者を結びつける「取引の場」を提供する仕組みを指します。その「取引の場」を運営する企業が「デジタルプラットフォーム事業者」です。まだあまりピンとこない方もいるかもしれません。代表的な具体例を紹介しますと、ネット通販サイトの「Amazon」、「楽天市場」、アプリストアの「App Store」、「Google Play」、デジタル広告の「Google 検索」やYouTube、Instagramでの広告表示などです。いずれも、サービスを提供する側と利用する側をつなぐ役割を担っています。

 

2 なぜ注目されているの?

 昨今、かかるデジタルプラットフォーム事業者は、以下の3点から注目されています。①利用者が集中しやすい(「一強」になりやすい)、②契約条件を一方的に決めることがある(優越的地位の濫用リスク)、③大量のデータを扱う(プライバシーや情報独占の懸念)の3点です。そのため、公正取引委員会などが監視を強めており、法律による規制も進んでいます。

 

3 法律上の規制

 令和3(2021)年に「特定デジタルプラットフォーム透明化法」が施行され、デジタルプラットフォームのうち、特に取引の透明性・公正性を高める必要性の高いプラットフォームを提供する事業者を「特定デジタルプラットフォーム提供者」として指定し、規律の対象としています。上記で挙げたものは、全て対象に指定されています。これらの事業者には、取引条件を開示する義務や、改善計画の公表義務等が課されています。

 

4 事業主の皆様が 気をつけるべき ポイント

 デジタルプラットフォームは非常に便利な反面、取引先や利用者との間でトラブルになりやすい面もあります。そこで、以下のポイントを確認していただきたいです。

契約・取引条件の確認

・プラットフォーム事業者との契約書・約款を読んでいますか?

・手数料や掲載順位、広告表示のルールは明確ですか?

・契約変更の通知方法や、事前に確認できる仕組みがありますか?

データ・情報の取り扱い

・プラットフォーム事業者に提供しているデータ(顧客情報・販売実績など)は、どのように利用されるか把握していますか?

公正取引への対応

・プラットフォーム側から不当に不利な条件を押しつけられていませんか?

 

5 最後に

 プラットフォームは販路拡大や業務効率化に役立つ一方で、「契約条件」「データ管理」「法規制」の観点で注意が必要です。リスク回避のため、定期的にポイントをご確認ください。