所有者不明土地の解消に向けた法改正等について (その1)【2022年2月】弁護士今井千尋
昨今、社会的な課題になっている所有者不明土地問題への対策として、令和3年4月、「民法等の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立しました。これらに定められた事項は我々の生活に大きな影響を与える内容となっておりますので、数回に渡ってその主な内容をご紹介いたします。今回は不動産登記法の改正に関する事項を取り上げます。
1 相続登記申請の義務化
これまで相続登記の申請は義務とされておりませんでしたが、相続により不動産を取得した者は所有権の取得を知った日から3年以内に登記を申請しなければならないとされました(ア)。また、遺産分割が成立した場合は、その内容を反映した登記も申請しなければならないとされました(イ)。正当な理由がないのにこれらの申請をしない場合は、10万円以下の過料の適用対象となります。
これらに関する施行日は、令和6年4月1日とされております。
2 相続人申告登記制度の新設
遺産分割が完了していない状態で相続登記を申請するためには、自己の法定相続分等を明らかにするため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得しなければならず、大きな負担を伴います。そこで、より簡易に上記1アの義務を履行するための制度として、相続人申告登記制度が新設されました。具体的には、①所有権の登記名義人に相続が開始したこと及び②自らが登記名義人の相続人であることを申し出る(添付資料は申出者が登記名義人の相続人であることが分かる戸籍謄本等)と、上記1アの義務を履行したものとみなされるというものです。
これに関する施行日は、令和6年4月1日とされております。
3 所有不動産記録証明制度の新設
現在、不動産は個別の土地や建物ごとに登記されており、特定の者が所有している全国の不動産を一覧化した証明書類は存在しません。このことが、相続登記の申請漏れに繋がっています。そこで、登記官において特定の被相続人が所有権の登記名義人となっている不動産を一覧化し、証明する制度が新設されました。
ちなみに、この制度は相続案件を扱う弁護士にとっては非常に有益な制度であり、一刻も早い施行が待たれますが、準備に時間を要するためか、施行日は未確定(令和8年4月まで)となっております。
4 住所等の変更登記の申請の義務化
これまで所有権の登記名義人(法人を含む)に氏名・名称、住所の変更があった場合、その登記は義務とされていませんでしたが、変更日から2年以内に登記申請をしなければならないとされました。正当な理由がないのに申請をしない場合は、5万円以下の過料の適用対象となります。
これに関する施行日は未確定(令和8年4月まで)となっています。