円滑に事業承継するには
円滑に事業承継するには~遺留分に関する民法の特例【2011年11月号】
●はじめに
平成20年5月に経営承継円滑化法が成立し、中小企業の事業承継に際し推定相続人間において民法の定める遺留分制度と異なる内容の合意をすることが認められた(民法特例)ことは、2008年7月号「企業承継円滑化法の成立」で榎本弁護士がご紹介しました。
その後、民法特例は平成21年3月に施行されましたが、中小企業庁に確認したところ、平成23年9月30日までの「確認」実績は37件とのことで、十分に活用されているとは言い難い状況です。その原因としては、推定相続人全員の合意を取り付けることが困難であることや手続が複雑であることも挙げられますが、それ以前にこの制度自体が一般に知られていないことも一因と思われます。そこで、今回はこの民法特例について、改めてご紹介します。なお、遺留分制度一般については、2009年9月号「「遺留分」について」をご覧ください。
●どんな合意ができるのか
以下の2種類の合意ができます。
後継者が旧代表者(現代表者を含みます)から贈与により取得した株式の全部又は一部について、
①遺留分を算定するための基礎財産に算入しないこと(除外の合意)
②遺留分を算定するための基礎財産に参入する価額を、合意時の価額とすること(固定の合意)
●どんなメリットがあるのか
①除外の合意については、事業承継にかかる会社の株式が遺留分減殺請求の対象から外れ、株式の分散を回避し、後継者に株式を集中させられることです。
②固定の合意については、後継者の尽力によって会社が成長した場合、それに伴う株式の価値上昇分を後継者が享受できることです。
●どんなケースに使えるのか
次の条件を満たす必要があります。
①事業承継にかかる会社が中小企業者(業種毎に定めがあり、例えば、製造業の場合、資本金3億円以下の会社又は常時使用する従業員数が300人以下の会社)のうち、3年以上継続して事業を行っている会社であること
②後継者が旧代表者の推定相続人であって、旧代表者からの株式贈与により議決権の過半数を有し、代表者となっていること
③旧代表者が後継者に対し、事業承継にかかる会社の株式を贈与したこと
④旧代表者の推定相続人全員が除外の合意又は固定の合意(併用することも可能です)を行い、その合意内容及び後継者が株式を処分した場合や旧代表者の生存中に経営に従事しなくなった場合の制裁措置を書面化すること
⑤経済産業大臣の確認を受けること(上記の「確認」実績とは、この経済産業大臣の確認を受けた数のことです)
⑥家庭裁判所の許可を受けること
●さいごに
以上のとおり、民法特例の適用を受けるためのハードルは決して低いものではありませんが、諸条件が整い適用を受けることができれば事業承継を円滑に行うことが可能になります。事業承継計画を立案される際には、一度は検討したい制度であることは間違いありません。
その後、民法特例は平成21年3月に施行されましたが、中小企業庁に確認したところ、平成23年9月30日までの「確認」実績は37件とのことで、十分に活用されているとは言い難い状況です。その原因としては、推定相続人全員の合意を取り付けることが困難であることや手続が複雑であることも挙げられますが、それ以前にこの制度自体が一般に知られていないことも一因と思われます。そこで、今回はこの民法特例について、改めてご紹介します。なお、遺留分制度一般については、2009年9月号「「遺留分」について」をご覧ください。
●どんな合意ができるのか
以下の2種類の合意ができます。
後継者が旧代表者(現代表者を含みます)から贈与により取得した株式の全部又は一部について、
①遺留分を算定するための基礎財産に算入しないこと(除外の合意)
②遺留分を算定するための基礎財産に参入する価額を、合意時の価額とすること(固定の合意)
●どんなメリットがあるのか
①除外の合意については、事業承継にかかる会社の株式が遺留分減殺請求の対象から外れ、株式の分散を回避し、後継者に株式を集中させられることです。
②固定の合意については、後継者の尽力によって会社が成長した場合、それに伴う株式の価値上昇分を後継者が享受できることです。
●どんなケースに使えるのか
次の条件を満たす必要があります。
①事業承継にかかる会社が中小企業者(業種毎に定めがあり、例えば、製造業の場合、資本金3億円以下の会社又は常時使用する従業員数が300人以下の会社)のうち、3年以上継続して事業を行っている会社であること
②後継者が旧代表者の推定相続人であって、旧代表者からの株式贈与により議決権の過半数を有し、代表者となっていること
③旧代表者が後継者に対し、事業承継にかかる会社の株式を贈与したこと
④旧代表者の推定相続人全員が除外の合意又は固定の合意(併用することも可能です)を行い、その合意内容及び後継者が株式を処分した場合や旧代表者の生存中に経営に従事しなくなった場合の制裁措置を書面化すること
⑤経済産業大臣の確認を受けること(上記の「確認」実績とは、この経済産業大臣の確認を受けた数のことです)
⑥家庭裁判所の許可を受けること
●さいごに
以上のとおり、民法特例の適用を受けるためのハードルは決して低いものではありませんが、諸条件が整い適用を受けることができれば事業承継を円滑に行うことが可能になります。事業承継計画を立案される際には、一度は検討したい制度であることは間違いありません。