書籍「ローヤリングの考え方」を出版しました【2022年7月】弁護士榎本修
今般、書籍「ローヤリングの考え方―法律相談・受任から交渉・ADRまで―」(名古屋大学出版会)を出版しました。今回は、この本の内容についてご紹介させていただければと思います。
ローヤリングの考え方 « 名古屋大学出版会 (unp.or.jp)
(名古屋大学出版会の書籍紹介ページ)
◆「ローヤリング」とは
「ローヤリング」は、もともとアメリカのロースクールで開講されてきた科目です。「弁護士」(Lawyer)にingを付けただけの単語ですから、直訳すれば「弁護士がすること」「弁護士の実務全般」となり、要するに法律相談や交渉など弁護士がやること全てはローヤリングであるとも言えます。この科目が日本で本格的に開講されたのは、法科大学院制度が導入され全国一斉に開校した2004年です。私は、開講当時は愛知大学法科大学院で「ローヤリング」科目を担当し、その後名古屋大学法科大学院でも同じ科目を担当したので、その時の授業の内容をもとに1冊の本にまとめたのが本書ということになります。
◆「ローヤリング」が、弁護士の仕事に役立つのか
「先生、そんな研究やお勉強が弁護士の仕事に役立つんですか?」と言われることもあります。しかし、法律相談や交渉の手法について、日本だけでなくアメリカの実務や文献も検討して色々検討してみることは、日々の弁護士実務に非常に役立っています。例えば、今回この本を書く中で、このような「ローヤリング」の目的は何かということを検討しました。この点については、①依頼者の「満足」を目指すのがローヤリングの最終目標だという考え方(満足説)や②依頼者の「安心」を目指すことこそがローヤリングの目標だという考え方(安心説)もあるのですが、私は本書を書く中で、③依頼者の方に「納得」していただくことこそがローヤリング・弁護士実務ではとても重要だという考え方(納得説)に至りました。
そのようなことを考える中で、私の最近の弁護士実務は前と少し変わってきたように思います。依頼者の皆さんに「今回の請求はどうしてこういう結論になるのか」「そこにはどういう法律が適用されていて、どんな裁判例があるのか」「判例がこのような考え方をしているのはなぜか」ということを法律の作られた趣旨に遡って分かりやすく説明することが増えてきたと思います(時にはくどいかもしれないので気を付けなければなりませんが)。
このことが影響しているのかどうかわかりませんが、最近、私は、依頼者の皆さん・顧問先の方から「ああ、よく分かりました」とか「なるほど。納得しました」という言葉を聴くことが気のせいか増えたような気がします。その場合、依頼者の方が少し安心した表情をされていたり、場合によっては笑顔を見ることができることもあります。私はそんなときに弁護士としてのやりがいを感じます。
少しでも良い「ローヤリング」ができるように、これからも研鑽を続けてゆきたいと思います。