騒音に関する法律問題【2020年2月号】弁護士亀村恭平

 

1 はじめに

 最近、羽田空港新ルートの試験飛行が話題になっています。都心を低空で飛行することから、騒音問題を含めた反対意見もあるようですが、今回は日常生活における騒音に関する法律問題についてご紹介します。

 

2 集合住宅に関するもの

 集合住宅に居住している場合、特に子どもがいる家庭では足音などの生活音が問題になることがあります。

 このようなケースでは、「お互い様だから我慢してください」と言いたいところですが、我慢の限界を超えて訴訟にまで発展することがあります。このような訴訟では、①騒音を防止するための工事を請求する、②慰謝料を請求する、③騒音により病気になった場合に治療費等を請求するといった請求が考えられますが、裁判所の判断基準はある程度確立しており、一定程度については我慢することを要求したうえで、「受忍限度」を超えた場合には不法行為に当たるという判断がなされています。

 

3 寺院の鐘に関するもの

寺院の鐘の音について、妨害禁止の仮処分として「鐘を鳴らしてはならない」との決定を求めた事例(高岡簡裁昭和45年10月1日)があります。この事例では、「音色も壮厳で左程苦痛でなく、他宗派攻撃または悪感情などの特別の原因をもたない限り、この音響により家庭生活の安全が害せられ、また、これが病気および大学受験不能の原因となるとは毛頭考えられない。」として請求を退けています。

これに対し、昨年12月には、苦情により除夜の鐘を中止する寺院があるとの報道もありました。報道の範囲では、裁判所の調停において実施する場合には防音パネルを設置することを余儀なくされたため中止するに至ったようですが、昭和45年の決定と比較して、時代の流れによる考え方の違いなのか、寺院の周辺環境による受忍限度についての考え方の違いなのか、裁判官の個性による違いなのか、非常に興味深い事例です。

 

4 保育園に関するもの

 さらに、保育園の近隣住民が、園庭で遊ぶ園児の声などの騒音が受忍限度を超えているとして慰謝料の支払と防音設備の設置を求めた事例(大阪高裁平成29年7月18日)もあります。

 この事例でも、裁判所は「受忍限度」という判断基準を採用していますが、自動車騒音及び電車騒音が連続的ないし継続的に存在する地域であり、保育園からの騒音による騒音レベルの増加はさほど大きいともいえないことや、保育園の持つ公益性・公共性自体は否定できないことも受忍限度を超えていないと判断した理由としており、単に騒音の大きさだけではなく、環境や発生源も含めた総合的な判断がなされています。

 

5 最後に

 日常生活における騒音に関しては、突然被害者になることもあれば、意図せず加害者になることも考えられます。トラブルになった場合に法的手続により解決できることもあります。